日本核武装論
北朝鮮の核実験以来にわかに我国の核武装論が賑やかになってきました。確かに相手からの攻撃を抑止するのには同等の攻撃力を持つのが一番です。現在我国では弾道ミサイル攻撃の防御として米国と連携して弾道ミサイル防衛体制を構築中ですが、これには多額の予算が必要です。しかも発射から着弾まできわめて短時間の猶予しかない為、有効に機能するか実効性に疑問を唱える人もいます。またシステムの根幹である改良パトリオットPAC3の射程は10数キロと短く、半径10キロ程度の極めて限定的な地域しか防衛できないとも言われています。
他方核武装した場合の費用はミサイル防衛の半分以下と考えられています。しかも究極の報復力を持つことにより相手の攻撃をかなりの高率で抑止できると考えられます。これが核武装を唱える人たちの論旨です。しかしこの説には重大な問題点があります。それは我国には現在核爆弾を運搬する手段がないということです。この問題をどう解決するかということを抜きにして核武装の是非を論議するのは実にナンセンスです。
また我国は様々な法的制約により、領空や領海を一方的に侵犯されても相手が攻撃しない限り(した時はこちらに相当な被害が発生してしまいます)相手に攻撃を加えることが出来ません。つまり核爆弾を保有しても使用する命令が下されることが現状では有り得ないのです。このような頓珍漢な状態で核武装などと言うのは子供の欲しい欲しい願望となんら変わりがありません。
我国は憲法で集団的自衛権の行使を禁じていますが、外交の基本に国連中心主義を据えています。これは実に矛盾する考えで自らが行動基準とする国連の安全保障活動には消極的で、国防の根幹である交戦権さえ放棄しながら本来危険な二国間の軍事協定である日米安保を国防の主体に据えるというのは論理矛盾の最たるものと言わざるを得ません。先の国連常任理事国の改定では発展途上国への援助バラ撒きの金権外交を展開したにも関わらず、見事に票読みが外れる支持の少なさや事務総長の選出を巡っても全く世界に相手にされていない現状をもっと認識すべきでしょう。そして外交努力を発揮して、平和外交を推進している日本を侵略させてはならないという多くの同盟国を持つことこそが本当の外交力であり、真の安全保障と言えるのではないでしょうか。
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コメント
「亡国のイージス」という映画を昨日(録画)で見ました。国とは何か、国防とは何かを問いただすものでした。国防を携わる自衛隊の存在とは何か?米国の武力の傘の下、安穏と暮らしている日本国民への警鐘とも受け取れました。北朝鮮の核の脅威に対し、世界唯一の核被害国が、核を戦争で最初に使用した国と手を結んでいる構図は、何とも滑稽で、国連においても平和国家であることを声高らかに言う姿は、他の国の失笑を受けていることでしょう。国防のあり方に我々国民は無関心です。自衛隊は災害支援活動に終始し、その結果、自衛隊員の意識は完全にずれた方向に向かっています。私は、武力対抗か、平和外交のどちらで国を守るのか、国民が国防について再考する時期に来ていると思います。これに無関心であることは、国として亡きものであることを自覚すべきです。
投稿: 山奥 | 2006年10月31日 (火) 06時10分
山奥さん、コメントありがとうございます。核兵器はその被害の深刻さを思えば使用してはいけない兵器のはずなのですが、年々その保有国が五月雨的に増えていくのは残念な限りです。我国は米国によって人類初の被爆国となり筆舌に尽くしがたい残虐な被害を受けましたが、当の米国に東京裁判の重要な罪状であった人道に対する重大犯罪の認識はありません。その米国がインド・パキスタンのそして公然の秘密としてイスラエルの核保有を容認したのは核拡散に対するダブルスタンダードそのものであり、被爆国であり核軍縮を願う我国に対する侮辱行為であると思っています。今、北朝鮮が核実験をし、イランが公然と核開発にまい進する時、既得権は当然と言わんばかりの無責任な核保有国達(いわゆる核クラブ)に物申す為にあえて核保有に踏み切ることには一理あるかなとも思いますが、前述したように現在の我国の状況では保有基地の確保ひとつをとっても国民のコンセンサスを得るのは難しくとても外交カードとして使いこなすことは出来ないと思われます。
我国は国策として核兵器はおろか他国に対する攻撃的兵器は保有していませんが、防衛力としてはかなりの能力(一般的には戦力というのでしょうが、憲法の手前がありますので・・・)を保持しています。艦船に対しては200機近い哨戒機と支援戦闘機が装備する対艦ミサイルでどんな船団も撃破できる能力を持っています。また航空機に対しても早期警戒機のAWACSに支援された戦闘機に装備されたレーダー内臓の長射程対空ミサイルで相手が攻撃を開始する前に迎撃行動を取ることが可能です。また巡航ミサイルに対しても一定の撃破能力を確保しています。このような我国に対して通常兵器による攻撃があるとは思えませんが、もしも核攻撃の威嚇があるのであれば、国際世論を味方に付けるのが最良の方策だと思います。もし日本に手出しをすれば世界が黙っていませんよという具合です。そんな同盟国をひとつでも多く作るのが真の防衛努力だと思います。
投稿: 雨辰 | 2006年10月31日 (火) 23時03分