ただ今地球に帰還中
先日西の夜空に月、木星、金星が接近して見える機会がありました。科学が進歩して人類は月に降り立つことも出来るようになりましたが、地上から眺める時には特別な思いを抱かせる一番近い天体です。人類が月に降り立ったのは今からもう40年も前のことになります。米国が国家プロジェクトととして巨費と多くの人材を投入したアポロ計画の輝かしい成果でした。
アポロ計画は単なる宇宙飛行にとどまらず、その過程で生まれた多くのものがその後の人類の生活に役立っています。低公害車として期待されている電気自動車に搭載される燃料電池もそのひとつです。逆に言えば40年経ってやっと民生品に生かすことのできる程の高いレベルの技術を投入していたミッションだったとも言えるのかも知れません。そのアポロ宇宙船が月面に残した活動の痕跡を世界で初めて日本の月探査衛星かぐやのカメラが上空から捕らえたのは我が国の宇宙技術が世界の最先端レベルにあることの証明です。ロシアも米国に対抗して月面に無人探査機を着陸させ、岩石サンプルを持ち帰っていますが最近ではあまり科学分野への進出の姿勢は見られません。宇宙技術はそのまま軍事転用が可能で、衛星打ち上げは弾道ミサイルに必要な技術の取得に大いに利用されており、最近の中国の積極的な宇宙開発に宇宙の軍事利用の影を心配する声もあります。
さて、我が国の宇宙開発予算についてはいつもその少なさが他国の何分の一の予算と言われ続けていますが、少ない予算でも大きな成果を挙げています。その一つに小惑星イトカワに向け打ち上げられた探査衛星はやぶさがあります。イトカワは日本のロケットの黎明期をリードした糸川博士にちなんで名づけられた小惑星です。はやぶさは2003年5月に個体ロケットM-Ⅴロケットで打ち上げられた重さ510Kgの科学衛星です。惑星間を航行する為イオンエンジンを搭載し、地球の重力を利用したスイングバイで加速され2年半後の2005年11月に各種観測の後、無事イトカワに着陸し岩石サンプルを採取しました。地球からイトカワまでは電波でも10分を要する為、着陸は自律航法によって行われました。直径わずか300mほどの遠く離れた小惑星に探査衛星を着陸させる技術は絶賛に値します。
その後技術的なトラブルではやぶさとの通信が途絶してしまいましたが、関係者の懸命な努力により通信が回復、無事地球に向け帰還していることが確認されました。しかしトラブルの結果予定は大きく狂い、当初の予定よりも3年遅れて2010年6月に地球に到達する見込みです。この間のくだりは規模は全く違いますが、深刻な事故に見舞われたアポロ13号の地球への帰還に向けたドラマチックな出来事と相通じるものを感じてしまいます。最近人類のいない地球に長期間取り残されたロボットのアニメが評判を呼んでいますが、はやぶさも地球に向け宇宙空間を必死に帰還中です。頑張れ、はやぶさ!
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