彦根城探訪
彦根城は車窓からは度々遠望したことがあり、以前から行ってみたい城でしたが、やっと機会があって訪れることが出来ました。以下の文章は写真を見てもらう時の参考として記しましたが、くどいと思ったら読み飛ばして下さい。
彦根城は幕末の重要人物である大老、井伊直弼を輩出した井伊家が14代260年に亘って治め、守り続けた彦根山に建てられた平山城の名城です。関ヶ原の合戦後に西国の守りの要衝として中山道、北国街道の合流点であり、琵琶湖に面した彦根に城が築かれました。築城は慶長8年(1602)に開始され翌9年に1期工事が完成し、彦根城と命名されました。これは徳川家康が天下人となりましたが、大阪城は依然として豊臣方の支配下であった為、天下平定とまではいかず、工事を急ぐ必要があったからです。この為城の構造物の多くは近隣の城からの移築で賄われています。
天守の完成は慶長12年(1606)、築城が完了したのは豊臣氏が滅亡した後の元和8年(1622)ですから20年を要したことになります。築城は武将の生死を左右する一大事ですが、戦時には時間をかけることは許されず、豊臣方の武将真田家の居城上田城は天正11年(1579)に築城開始しましたが、天正13年の徳川方の攻撃時には早くもあらかた出来上がっており、見事敵を迎え撃っています。姫路城を始めとする現存する城の多くは関ヶ原の合戦以後に建てられていますが、戦に備えたと言うよりも統治のための政治的な意味合いが強く、築城には長い年月をかけています。
中堀に面した佐和口多門櫓、城の正門である表門を守っています。彦根城は外堀、中堀、内堀と三重の堀に囲まれた堅固な構えでしたが、表門と大手門の二つの正門を持っています。壁には狭間(ざま)と呼ばれる銃眼が設けられています。佐和口多門櫓は関ヶ原の合戦で敗れた石田三成の居城であった佐和山城からの移築です。
ピンボケでお恥ずかしい限りですが、内部から見た狭間です。鉄砲の伝来以後、城郭もそれに備えた作りとなっていて壁が厚くなっています。
佐和口多門櫓の内部。弓や鉄砲などの武器を持って動き易い作りとなっています。
佐和口多門櫓の枡形虎口、築城当時は上部に櫓が通じていましたが明治の廃城時に失われてしまいました。敵の寄せ手を封じるため、通路をわざと曲げて直進出来ないようにしています。ここを通過しようとすると正面ばかりか左右、上からも鉄砲で銃撃されることになります。
中堀にかかる大手橋。ここを渡ろうとすると大手門方向からはもちろん、画面正面から狙い撃ちに遭います。
表門、大手門からの合流点となる天秤櫓と堀切です。堀切は天守に通じる尾根を断ち切って人工的に作られた障害です。有事にはこの橋を落して籠城することになっていました。映画や時代劇によく登場しています。
正面からの天秤櫓。長浜城の大手門を移築したものと言われています。橋の左右で石垣の積み方が異なっています。右側が築城当時の牛蒡積み、左側が嘉永7年(1854)の大修理で積み替えられた落し積みとなっており、大石のみが表面に出る外観重視の落し積みが時代の流れを感じさせます。
天秤櫓の内側。ここでも通路が曲げられて直進出来ないようになっています。
本丸への最後の障害となる太鼓櫓。ここも通路は曲げられていて、門に直進出来なくなっています。この櫓も佐和山城か長浜城からの移築と言われていますが、どちらからのものかははっきりしないようです。
国宝の彦根城天守。大津城の4層天守を移築して3層とした為、上層が小じんまりしてちょっとバランスが悪く見えます。これは大津城が一度落城していることと4層の4が死を連想させることから縁起を担いだ為ではないかと言われています。天守は本丸裏側を守る備えにもなっており、狭間のある付櫓を持っています。
※天守は天守閣と呼ばれることがありますが、閣と言うのはもともとは二階作りの長屋造りをさす言葉なので、今日では天守が正しい呼称とされています。
天守西側にある西の丸。現在ではお花見の名所となっています。山上の広い平地なので、軍事目的でない多くの建物があったのではないかと思われますが、残念ながら西の丸に言及した資料を見つけられていません。
西の丸三重櫓。これも移築で元は浅井長政の居城小谷城の天守だったと言われています。筆頭家老がここで執務を取っていたとされています。
西の丸三重櫓の外側に設けられた空堀。西の丸にはこの堀に架けられた橋を渡らなければなりませんが、天秤櫓同様に橋が落とされると極めて困難だと思われます。
こうして見ると彦根城が城攻めについてかなり強固な備えをしており、中堀を渡ってからはほとんど天守を望むことが出来ないなど、同時期に築かれた同じ平山城である姫路城同様に鉄砲対策も十分考えられていることが判りました。今回はあいにくの天候で、中堀外側からの天守を望むことが出来なかったので、日を改めて再訪したいと考えています。
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