宇宙(そら)駆ける夢
韓国の科学技術衛星2号を搭載した初の自前ロケットKSLV-1はどうやら軌道投入に失敗した模様です。模様ですと言うのは、未だ衛星との間の通信が確立できず衛星そのものの軌道位置を当局が把握出来ていないからで、今の時代に考えられない事態で、ちょっとあきれてしまいました。我が国がソ連、米国、フランスについで人工衛星の打ち上げに成功したのは1970年2月でした。その後「おおすみ」と命名されたL-4Sロケットの4段目は打ち上げ後順調に飛行を続けましたが、その間グァム、ハワイ等の各地上局が衛星からのビーコン電波を受信し続け、サンチアゴ、ヨハネスブルグで受診された時に打ち上げ成功の祝電が寄せられたように記憶しています。
韓国当局は自力での衛星の把握が出来ず、米国NORDの観測データーに頼る方針のようですが、あれから40年も経っているのに衛星打ち上げ国の能力としてはちょっと考えられないレベルの低すぎる話です。そもそも衛星の切り離しはあらかじめプログラムされた慣性誘導装置によって行われるはずですが、設定高度306Kmに対して342Kmでは誤差が12%もあり、科学技術衛星打ち上げどころのレベルではありません。
※追記 その後失敗の原因について新たな発表がありました。それによれば韓国が開発した衛星のフェアリングの分離に失敗し、残った片側のフェアリングの重量によって衛星は軌道投入速度に達することが出来ず、地上に落下して消滅した模様とのことです。これまで発表の内容が二転三転しましたので、最終報告が出されるまでは中間報告的なものと考えた方が良さそうです。
韓国には南北間の戦争状態によって、ロケット開発が制限され続けた不幸な歴史がありますし、我が国も固体ロケットから液体ロケットへの転換に米国のデルタロケットの技術を導入し、国産のH-Ⅱにつなげるまで20年程費やしていますから、あまり功をあせらず地道に努力を続けて欲しいものです。
よその国のことはこれくらいにして、H-ⅡBの話題です。いよいよ来月9月11日にH-ⅡBの初号機となる試験機がHTV:宇宙ステーション補給機の技術実証機を搭載して種子島から打ち上げられます。HTVも23日には無事フェアリングに収められて順調に作業が進んでいるようです。これまで我が国の宇宙ロケットは各段すべて1基のエンジンしか搭載していませんでした。これに対してロシア、中国などはエンジンを束ねて使用するクラスター化によって大きな推力を得ていました。HTVは質量が10.5トン、ペイロード6トンもあるため、初めてメインエンジンLE-7を2基にすることによって打ち上げ能力を増加させたものです。H-ⅡAはいままで15回の打ち上げにおいてLE-7の不調による失敗は起きていません。(6号機は途中で指令破壊されましたが、SRB:個体ロケットブースターのノズル破損による信号ケーブル損傷によるものです) 搭載するLE-7も従来通り実機でそれぞれ燃焼試験を行っていますので、まず間違いは無かろうと思うのですが無事上がることを祈っています。
またHTVは直径4.4m、高さ11mで大型バス並みの大きさと言われていますが、アポロ宇宙船の指令・機械船のサイズが3.9m、11mでしたのでそれに肩を並べる大きさで、米・ロに大きく遅れをとった我が国の宇宙技術もやっとここまで辿り着いたかと感慨深いものがあります。近い将来スペースシャトルが老朽化によって退役してしまうと宇宙に大型設備を運べるのはHTVだけになってしまうので、その存在意義はますます大きなものとなってきます。
更に最近HTVを改造して有人宇宙船を作るプランも発表されていますが、政権の行方もあり、今のところこちらは大いなる夢と言ったところですか。
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