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2009年9月 3日 (木)

22DDHの目指すものは?

総選挙の結果を受けて世間が騒然としている最中の8月31日に防衛省が平成22年度の概算要求を公表しました。74、90式の更新となる10式(制式化予定)新型戦車や新型哨戒機P-1などこれからの防衛の根幹をなす装備の中に22DDHの要求があり軍事愛好家の耳目を集めています。DDHと言うのはヘリコプター搭載護衛艦のことで、従来型のはるな・しらね型では哨戒ヘリコプターを3機積んでいます。それが16DDH、18DDHであるひゅうが型で最大11機となり、実質的なヘリ空母となっていました。またはるな・しらね型では船上では大規模な整備が出来ませんでしたが、ひゅうが型では格納庫内で天候に左右されることなく整備が可能となっています。これは長期間対潜作戦を行う上で非常に大きなアドバンテージです。そして22DDHですが、基準排水量19500t、全長248mもあり搭載ヘリは過小申告でしょうが最大14機となっています。ちなみに16DDHは基準排水量13950t、全長197mですからふた廻り程大きくなったことになります。さらに燃料補給機能を持ち、3.5tトラック50台、最大4000人を輸送出来る能力があるとされます。

政策評価書の事前の事業評価によれば「周辺海域の防衛能力及び海上交通の安全確保。国際平和協力活動、大規模災害派遣等の多様な事態に対応するため」(筆者要約)としています。しかしこの用途は多分に建前的であると言うのが一般的な見方です。まずこの大きさですが、他国では軽空母、強襲揚陸艦に匹敵するサイズです。ハリアーGR.7/GR.9、10機を搭載する英海軍軽空母インヴィンシブルが基準排水量16000t、全長210mですからこれをしのぎ、ハリアーⅡ6~8機を搭載する米海軍のワスプ級強襲揚陸艦の満載排水量40032t、全長257m、に迫る大きさである訳です。早速中国から、軍拡競争を引き起こすものとのクレームが起きていますが、SLBMを配備し、通常動力攻撃型空母を建造しようとしている国から言われる謂われはありません。

16DDHが計画された時も将来的に固定翼機を搭載して空母として運用するつもりだと散々たたかれましたが、その時はそのような計画はなく、全長が短く船体も小さいので固定翼機の運用には向かないとされました。そして今回の22DDHですが、防衛省は前回同様に運用予定はないとしていますが、額面通りには受け取れません。それは固定翼機の運用の障害が存在しないサイズであるからです。ですから何故この船体サイズなのかと言うことが妄想を掻き立てます。以下思いつくまま妄想を並べてみます。

①強襲揚陸艦として島嶼防衛にあたる。

これが一番妥当なところだと思いますが、有事の際にひゅうがいせおおすみなどと連携し、AH-1SやCH-47を満載して迅速に防衛線を構築する。奪還の場合はヘリボーンや対地支援によって一気に敵上陸部隊の背後を衝いて補給を断つ。

②米海兵隊との連携。

①のバリエーションですが、甲板はスキージャンプ型としておいて、有事に在日米軍保有のハリアーⅡのプラットフォームとして使用し、遠方から島嶼防衛のための対地支援を行う。     

③台湾有事の際の中国潜水艦の阻止。

これも日米共同行動に基づく作戦ですが、多数のSH-60Kにより米空母の台湾接近阻止のために遊弋する中国潜水艦の牽制。

④海外災害派遣、海賊対処。

これは額面通り。

⑤UAVの運用。

現在実証試験中の小型無人偵察機の着陸用母艦。高速を利用して光学偵察を行うと言われていますが、統合電子戦装置を搭載すれば有人のリスクなしで敵の電波情報が入手可能となります。また攻撃機として運用する時はペイロードによって短縮された帰りの航続距離を補うことが可能となります。

⑥海自待望の空母として

現在の周辺状況からして必ずしも空母の保有が求められるものではありませんが、離島防衛の対地支援や対艦攻撃において固定翼機の存在は作戦の幅を広げます。但し、カタパルトの装備は今のところ無理なのでVTOL機が必要ですが、ハリアーは生産を終了しており、F-35Bはいつ導入出来るか目途が立っていないので、まずここをクリアしないと画餅に終わってしまいます。

いずれにしても新政権の安全保障政策が必ずしも明確になっていませんし、防衛予算枠も不透明のままですから22DDHがすんなり承認されるかは判りません。しかし16DDHの計画の際には世論の動向を気にして別案イラストの観測気球を上げてから、本命の船体イラストが公表されたことを思えば、最初から直球勝負が出来るようになったのは喜ばしいことだと思います。   

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コメント

軍事については疎いのですが、

先日、富士重工が国から受注を予定していたヘリのライセンス料60機のうち未購入分の約40機について損害賠償する記事が出ていましたね。
確か、一機当たりの単価が予定よりかなり高くなったため、購入数を下げるしかなかったようです。

ヘリ搭載艦を新設しても乗せるヘリがあるんですかね?

投稿: 山奥 | 2009年9月 4日 (金) 05時48分

山奥さん、コメントありがとうございます。おっしゃる通り、搭載ヘリは明らかに不足です。財政上の理由から自衛隊の保有する航空機は上限が決められていて、しかも削減傾向にあります。哨戒機も今後P-3Cから国産のP-1に更新されますが、現行の100機程から80機に削減されてしまいます。(海自は性能アップで全体の能力は向上としています)
海上自衛隊の護衛艦隊は4隻からなる護衛隊、2護衛隊からなる4つの護衛隊群で構成され、1護衛隊群は8隻で8機のヘリコプターから成っているため88艦隊と呼ばれています。16DDHの護衛艦ひゅうがも最大11機を艦内に収容(甲板に駐機すればもっと多数)出来るのですが、そこまで搭載するへりがありません。
また海自のヘリは主に対潜作戦が主任務となりますので、米軍の海兵隊のような組織を持たない自衛隊の場合、上陸した敵部隊を攻撃するためには陸自の攻撃ヘリや大型輸送ヘリが必要になります。今後陸海空の統合運用が行われる方向ですが、このような中で22DDHを建造するのには明らかになっていない運用方針が隠されているとしか思われません。

投稿: 雨辰 | 2009年9月 4日 (金) 06時08分

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