エコナ問題について
花王のエコナの安全性が問題になっています。エコナは元々カロリーの高い食用油の組成を変えて腸内での吸収を抑える成分を主体としたものですが、オレイン酸とグリセリンを反応させてジアシルグリセロールを作る過程で副次的にグリシドール脂肪酸エステルが生成されていました。最近になってこのグリシドール脂肪酸エステルが胃酸などによってグリシドールに変性することが判り、問題となっている訳です。
エコナ危険論者は人体に有害、又は安全性に疑問があるものを販売するのはけしからん、製造・販売を中止しろと花王にせまっています。花王はエコナにグリシドール脂肪酸エステルが高濃度で含有していることを認め、不安感を考慮して製品の販売を自粛、安全性の確認を行うとともに、含有率を1/10に改良して販売を再開したいとしています。
私なりに調べてみましたが、事実関係がどうも良く判りません。ジアシルグリセロールやグリシドールに発がん性があるとされるのですが、我が国ではそれらの安全基準が決まっていないようなのです。エコナの発売が1999年で、その間厚生省からは特定保健用食品の許可を受けており、食品行政的にちょっとまずい気がします。また、問題提示は良いのですが、中には企業を糾弾する論調が見られるなど、もう少し落ち着いた議論が必要な気がします。かつて人工甘味料のサッカリンやチクロに発がん性があるとセンセーショナルに取り上げられ食品業界を巻き込んで大騒動となりましたが、その後評価方法に問題があったことが判り、現在ではその有毒性は疑問視されています。(サッカリンは米国と中国では大量使用中、チクロもEU、カナダ、米国で継続使用中)
私が問題だと思っているのは以下の3点です。
1.ジアシルグリセロールの毒性が明確でない。
高リノレン酸、高オレイン酸、中鎖脂肪酸等、他の油類との比較試験の結果をみても必ずしも発がん性が高いようには見えません。サンプル数も数十検体なので個体差の影響も含まれている可能性が高いと思われます。複数の施設で検体数を増やしての試験が必要だと思います。
一般の食用油にも安定化を目的としてグリシドール脂肪酸エステルが含まれているようです。もし本当に危険性があるのであれば、エコナだけでなく食用油全般の問題となります。
2.グリシドール脂肪酸エステルからグリシドールに変性する割合が不明。
グリシドールの毒性についても明確な基準がないようですが、変換率が低ければさらに安全性は高くなります。グリシドールの毒性について考える時に変換率は無視できません。
3.エコナの特保は取り消すべきか?
現在エコナの特保見直しについて検討されていますが、エコナは食後に吸収されないことを狙ってメタボを予防し、そこから誘発される成人病の発生を抑える為の食品です。仮に低率の発がん性が認められたとしても、メタボ対策としての効果が優れているのであれば、自己責任で使用は認められても良いのではないでしょうか、別の意味での特定保健用食品として。乳製品や食肉などの高摂取者にある種のがんの発生率が高くなることは良く知られていますが、誰もそれらを禁止しようとは言いません。正しい情報が開示され、個人が自由に選択できることが重要ではないでしょうか。
個人的にはサプリメントや食品添加物はなるべく避ける立場ですが、昨今のエコナに関する騒動にはまたかとうんざりとしています。医学や食品の分野では大発見の扱いで取り上げられたことが、後日見直されることが珍しくありません。イカ、タコの高コレステロールの問題やサッカリンの発がん性などは多騒ぎの後であっさり否定されてしまいました。治療薬として認可されたはずの薬が、効果なしとされて承認が取り消されたケースもあります。あまり一時の感情に流されず、時間をかけて事実を積み重ねて判断することが大切だと思います。福島大臣には人気取りに走らず、冷静な舵取りを期待します。
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コメント
食品被害は直接消費者にかかわることもあって、かなり敏感な反応を示すことは仕方が無いのかもしれません。
しかし、科学的根拠に則ってないものもあり、その昔、某人気健康TV番組で取り上げられた食品は、消費者が買い物求め、あっという間に品不足になったこともありました。
日本人は、熱しやすく冷めやすい。
感情的でなく、科学的に、論理的に判断してもらいたいものです。
エコナ問題では、同社製造のペットフードまで影響が及んでいるようです。
投稿: 山奥 | 2009年10月 7日 (水) 06時17分
山奥さん、コメントありがとうございます。食品問題では昨日までの常識が、ある日を境に180度変わってしまうことが良くありますね。バターよりも植物由来でヘルシーと言われたマーガリンはトランス脂肪酸によって心臓疾患の比率を高めてしまうそうで、単なる思い込みだけで判断することは大変まずいことだと思います。サッカリンの安全試験では何故かオスのラットだけに異常が出ましたが、他の動物では全く異常が出なかったそうです。
疑わしきは・・・は大切ですが、最終的には科学的所見によって判断されることが必要だと思います。
投稿: 雨辰 | 2009年10月 7日 (水) 07時47分