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看板に偽りあり

予算の無駄使いをなくそうと、行政刷新会議による各省庁の予算の中身を審査する事業仕訳が行われています。厳しい財政事情の中、その方針は間違っていないと思いますが首をひねる場面がありました。民間企業の場合、経営が行き詰った場合に取引銀行が運営に乗り出す場合がありますが、往々にして上手く行きません。企業は物を作るなり、サービスを提供して利益を上げる訳ですが、金融関係者の目には直接売り上げに結び付かない事業は無駄な経費としか映らず、設備投資の過度な抑制や研究開発費の削減によって一時的には財務状況を改善しても企業の将来的な芽を摘んでしまうことが多いからです。

今回の次世代スパコンの開発予算を巡るやり取りを見て、財務省主導による「金融屋」の視点を強く感じました。このような基礎研究的な事業に成果主義を持ち込むことが笑止ですが、達成できなかった時のリスクヘッジと聞いて呆れ果てました。そもそも研究開発が予定通りに達成できて即企業ベースに乗るのであれば、政府の支援など必要ありません。様々な困難が予想され、国家横断的な体制が求められるからこそ政府予算が必要となるのです。こんな有様では宇宙開発やスプリング8のような基礎研究が立ち行かなくなってしまいます。基礎研究が中止になってもすぐ日々の生活に直結する訳ではありませんが、長い目で見れば国力を削ぐことは間違いありません。

民主党は予算、外交の基本方針を決定する機関として国家戦略室を立ち上げましたが、この案件こそそこで取り扱うべきで、わずか数十分の議論で簡単に済ませられるプロジェクトではありません。まあこれで、この事業の命運が決定してしまった訳ではありませんが、東大工学部卒の首相、東工大理学部卒の副総理の内閣としてはずい分お寒い科学振興政策論議と言わざるを得ません。少なくとも国家戦略室の看板が泣いていることだけは確かです。

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コメント

自分たちのマニフェストを実現するために金が足りない。だから、予算を廃止するのだそうだ。現場を知らない、いい加減、無責任な発言を読んでください。あきれて、開いた口がふさがらない。

投稿: 路傍の人 | 2009年11月15日 (日) 17時00分

路傍の人さん、コメントありがとうございます。自民党政権下では、天下りや便宜供与、利権の見返りが期待出来る案件に優先的に予算が配分されて来ました。新政権になって事業仕訳を行い、そのような無駄な事業の予算をCUTすることは必要ですが、何もかも金額で換算することが妥当だとは思えません。

文教関連や科学技術開発では当座の収支ではなく、そこから得られる将来的な利益を優先すべきです。日本のテレビ開発の始祖、高柳健次郎氏がイの字をブラウン管に映し出すことに成功したのは1926年でしたが、NHKが我が国最初のテレビ放送を開始したのが1953年でした。幻となった1940年の東京オリンピックでのテレビ放送を目指してから実に27年後のことですが、高柳の業績がなければ更に多くの年月が必要だったかも知れません。

科学技術の開発では目先のことに囚われずに、技術・学術を優先して開発に当たることが必要です。結果は後から付いてくるものであって、成果優先・コストパフォーマンス重視では決して良い結果は生まれません。まず何を為すべきかを論ずべきであって、どれだけ利益が見込めるかを論ずるのはその後でしょう。必ずリターンが見込めるのであれば誰にも苦労はありません。

投稿: 雨辰 | 2009年11月15日 (日) 19時25分

蓮呆(当て字です)、いい加減にしろ!って感じですよね。
今までやってきたことを「悪」ととらえて、聞く耳を持たない姿勢は、相手に対し無礼です。

根拠のない「無駄」発言も問題です。

実績評価ばかりで将来構想を示さない。

そんな中、毛利氏が日本科学未来館について、事業効果等を仕分け人から質問され、反論したやりとりには胸がス~としました。

投稿: 山奥 | 2009年11月17日 (火) 06時06分

山奥さん、コメントありがとうございます。財務省の官僚が仕訳側に入って無駄を指摘していますが、従来の査定がいかにいい加減であったかを自ら暴露しているようなものです。
記事にも書きましたが、全体戦略が明確になっていないので個々の予算のそれこそ重箱の隅ばかりをつついているように見えます。

日本科学未来館のような予算を削っておいてこの国の将来像をどのように描くのでしょうか?税収が厳しい今こそ米百俵の精神が求められるのだと思います。

投稿: 雨辰 | 2009年11月17日 (火) 06時24分

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