冗長性
トヨタは凋落した米国のビッグ3を追い抜き、悲願の世界一の自動車メーカーとなりましたが、皮肉にも世界最大のリコール問題で苦しんでいます。アクセルペダルがフロアマットに引っ掛かって戻らなくなり、暴走する恐れがあることや、部品の不具合によって踏み込んだアクセルが戻り難くなる新たな問題で、世界中で数百万台をリコールしましたが、今度はプリウスなどのHV車のABSシステムにも設定の不具合が見つかり、安全神話が完全に崩壊してしまいました。
トヨタ車には、これ以外にもエンジンの回転が突然上がってしまう現象があることが伝えられています。
自動車は自ら動く車と書きますが、ドライバーの意思通りに走る・曲がる・止まるが出来なければなりません。自動車はこれらが確実に出来るから自動車足り得る訳です。走るけれど止まらないでは凶器になりかねません。ABSの問題では静穏性を重視するあまり、機械式のブレーキの倍力装置を非搭載にしたと伝えられていますが、仮にそうだとすればとんでもないことです。
技術の世界には「冗長性」、「冗長化」と言う言葉があります。これはシステムに何らかの障害が生じても機能を維持出来るように予備の系統を設けたりしてバックアップし、安全性を高める考え方のことで、旅客機が片方のエンジンが停止しても飛行可能なようになっていることや自動車のブレーキの油圧系統が2系統になっていて、万一どちらかのブレーキオイルが失われても残りのブレーキで停止出来るようにしていることが有名です。
この考え方で行けば、アクセルの作動不全に対してはエンジンの緊急停止や動力伝達遮断機構の追加が、ブレーキの不備に対しては電気、機械のどちらか一方がダウンしても残りの系統で確実に止まるブレーキ能力が必要と思われます。
最近ではオートクルーズ機能の普及や車載レーダーによる車間距離維持機能が実用化され始めましたが、システムダウンの可能性はどこまで行っても残ります。最終的にはドライバーのマンパワーが物を言う訳ですが、システムの方でも冗長性を確保して、より安全なクルマ造りを目指して欲しいものだと思います。
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コメント
トヨタはボタン始動式の車について3回押せばエンジンが停止するプログラムを新設するようです。マニュアルクラッチ搭載のバイクでは転倒などの非常時に備えてエンジンを停止出来るキルスイッチと言う機構があり、これならレバーを左右どちらかにひねれば一発でエンジンを停止出来ます。今回の改良では異常発生時に果たして落ち着いてボタンを3回押すことが可能かどうかについては疑問が残らない訳ではありませんが、まあ、カイゼンの第一歩として効果を見守りたいと思います。
投稿: 雨辰 | 2010年2月12日 (金) 23時02分