V-22 オスプレイについて
普天間飛行場の移設問題に絡んで、たびたび名前が浮上する航空機があります。一般にはオスプレイと呼ばれていますが、チルトローター機構を持つV‐22は1982年に発表された米国4軍共同の統合先進垂直離発着機(JVX)に端を発しています。
チルトローター機は離発着時にはローターを上向きにしてヘリコプターのように滑走路のない所でも運用でき、水平飛行時にはローターを前方に向けてプロペラ機のように飛行できる新しいタイプの航空機です。その名の通り垂直離発着できることを想定していましたので、①従来タイプのヘリ、②ハリアーのような垂直離発着機、③全く新たな機構を持つ航空機の中から選定されることになりましたが、必然的に③のタイプが要求されました。ただし4軍の内、輸送の大半を輸送機での輸送を想定している陸軍は速度、搭載量の要求に対しては大型輸送機に振り向け可能であることから、あまりこの計画には乗り気ではありませんでした。
しかし、開戦当初に一定量の人員や物資を投入する必要にある海兵隊は違いました。長距離を高速で移動でき、垂直着陸できるこの機体は苛酷な任務を要求される部隊にとって、大変気になる存在でした。このため海兵隊向けをMV‐22、空軍向けをCV‐22として開発が続けられましたが、MV‐22は武装した兵員24名を搭載して現行のCH‐46の2倍に当たる2200Kmを作戦可能半径とされており、海兵隊要求の360機全てが配備されれば単純計算で6640名を即座に前線に投入できることになるのです。
オスプレイは独特の飛行特性を持った機体であるために開発段階で4回の墜落事故を起こしました。このため、今でもこのことを取り上げて欠陥機呼ばわりする軍事評論家がいますが、大変な誤りです。墜落原因については詳細な事故原因の究明が行われており、全て対策が取られました。制式化されて以降、機体特性に起因する事故は発生しておらず、稼働率の高さを見ても欠陥機と呼ぶべき所見は見当たりません。
今日になっても開発段階の事故を取り上げて批判し続けるのは、情報の更新ができない旧人類と呼ぶべき人々としか思えません。V‐22の開発段階では特異な飛行形態による機動が十分解明できず、合わせて30名の犠牲者を生んでしまいましたが、それでも訓練飛行での墜落事故で45名を失ったAV‐8 ハリアーよりもはるかに少ない人員です。それでもハリアーが欠陥機とは呼ばれたことはありませんでしたが、何故オスプレイだけが目の敵にされるのか分かりません。
また、搭載エンジンの出力から騒音の大きさをうんぬんする人がいますが、これも重大な誤りです。一般的に、回転翼を持つ航空機の騒音は垂直飛行時に空気をかき混ぜるブレードの長さに比例すると言われています。また、一般の回転翼機では飛行に必要な揚力を全て回転翼に頼らなければなりませんが、チルトローター機は短いながらも固定翼を持つため、翼からも揚力を得られますからその点でも有利です。現行機であるCH‐46Eのローターブレード径が15.58m、V‐22が11.58mですから通常飛行時はローターを進行方向に転換するV-22の方が騒音が小さくなるのは当然です。騒音と安全に関しては問題ないと言えるのではないでしょうか。
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