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2010年6月10日 (木)

技術開発に王道なし

本日午後5時1分韓国のKSLV-1ロケット2号機が打ち上げられましたが、発射後137秒後高度70Km付近で爆発し、打ち上げは再び失敗した模様です。当初の打ち上げシーケンスでは395秒後に2段目に点火、540秒後に衛星を分離する予定でした。

韓国は早期に自前の人工衛星の打ち上げを目指していましたが、液体燃料ロケットの実績がなく、仕方がないのでそれまで人工衛星の打ち上げで協力関係にあったロシアに技術協力を仰いでKSLV-1の1段目を提供してもらうことにしました。KSLV-1の1段目は本来2トン級の衛星を打ち上げる能力を持っているのですが、韓国が開発したとされる2段目の固体ロケットの推力が少ないため、100Kgの衛星しか打ち上げる能力がありません。

本来は昨日が打ち上げ予定日でしたが、発射台周辺の消火設備の誤作動と言うおよそ聞いたことがない理由によって、打ち上げは延期されました。期待に胸ふくらませた韓国民が戸惑っている最中、開発が凍結されていた2020年に1.5トン級の衛星打ち上げを目指したKSLV-2打ち上げ計画が発表されました。
前向きな計画は大いに結構なのですが、未だ韓国には液体燃料ロケットの技術はなく、ロシアにも技術移転の意向はありません。我が国の場合も1975年に液体ロケットエンジンのLE-3を開発して以来、LE-5の開発が1986年、H‐Ⅱロケット1段目に搭載のLE-7に至っては1986年の開発開始から8年後の1994年にやっと実用に漕ぎつけましたが、LE-3の開発以来実に19年の歳月が必要でした。

翻って韓国の場合、我が国のカッパー、ラムダに相当する固体燃料ロケットもNロケットに相当する液体燃料ロケットの打ち上げも経験していません。実情は打ち上げの全てをロシアに頼らなければ右も左も分からないのが現実です。技術は日々進歩していますから我が国同様の19年が必要とは言いませんが、逆に自前の多段式固体ロケットの運用経験すらない国が、どうやって液体燃料ロケットをぶっつけ本番で打ち上げることが出来るのか大いに疑問です。

学問に王道なしとはよく言われる言葉ですが、技術開発はそれ以上に甘くありません。一つ一つの技術の積み重ねこそが次のステップへの唯一のパスポートであるからです。わずか10年で全く技術蓄積のない液体燃料ロケットを完成させることができるかどうか、今回の失敗を真剣に振り返ってみた時にその答えが明らかになるの筈です。

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コメント

爆発の原因の究明には時間がかかりますから、今の段階で原因を特定する事は出来ませんが、下記のような気になる情報が出ています。

1つは前日に噴出していた消火剤に腐食性があったというものです。韓国当局者は資金難から腐食性のある機材を使わざるを得なかったと言っています。ならば作働した際の事後処理の手順や機体の点検方法について事前に細則を定めておく必要がありましたが、どうもその辺がなおざりにされていたようです。またロシア側の延期のアドバイスを無視して韓国側の強い意向で打ち上げが強行されたとのことですが、安全確認の軽視と取られても仕方ありません。消火剤の影響の有無については詳細な検証が必要です。

もう1つ、ロシア側の見解では1段目の燃焼中に2段目が点火してしまい、それが爆発事故につながったと言うものです。ロシアが何の根拠もなしに言っているとも思えませんが、裏付けが明らかになるのを待ちたいと思います。

投稿: 雨辰 | 2010年6月11日 (金) 19時49分

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