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2011年1月22日 (土)

対艦弾道ミサイルのジレンマ

1996年、中国は台湾の総裁選挙に露骨に干渉し、海上に多数の弾道ミサイルを着弾させて台湾を威嚇しました。これに対し米国は空母2隻からなる空母戦闘群を台湾海狭に派遣して、事態の鎮静化に当たりましたが、米国の圧倒的な航空戦力を前に中国側は手も足も出せず、歴史に残る屈辱を味わうこととなりました。この時の教訓から中国は空母保有を本格的に決意したのではないかと言われています。ただし、1998年にスクラップ用途と虚偽の名目でウクライナから試験用に導入したと思われる空母ヴァリャーグは未だ就役していません。

一方でミサイル技術の発達から、中距離弾道ミサイルの東風21を対艦ミサイルとして米空母に直撃させようと言う構想が持ち上がりました。弾道ミサイルは遠距離から発射できるので、敵の反撃を受けにくく、弾頭は高速で飛行しますので、迎撃がしにくいといった利点があります。一部の論評に、これで台湾有事の際にも米空母はミサイルの射程圏内に近づけなくなったとするものが出て来ましたが、はたしてそうでしょうか?いくつかの疑問が残ります。

その1 東風21はマッハ10程度と高速で飛来するので迎撃されない

回答  米国は空母護衛のためにミサイル防衛スシステムを備えたイージス艦を多数

     配備しており、また高空から飛来することで却って補足は容易でありSM-3

     で迎撃可能と思われます。

その2  米国の空母は30ノット(時速約55Km)で航行できるが、ミサイルは短時間

      で到達するので回避できない

回答  東風21の速度を最大3Km/秒とした場合、1500Km離れた空母までの

     到達時間は 1800÷3=600秒 → 10分 

     空母の移動距離は  55Km×10分÷60分=9Km

     となって、発射時点の位置から最大で9Km離れた位置に移動可能です。

     仮に衛星などで補足した発射時点での位置情報をリアルタイムでインプット

     できたとしても着弾時の未来位置を予測することは困難と思われます。

その3 弾頭自身に空母を捉える誘導装置を備えれば移動しても補足が可能

回答  大気圏への再突入時、表面温度は空力加熱によって1400℃以上の高温と

    なり赤外線方式のシーカーは使用不可能、レーダー式のシーカーも高温に

    よって生じるプラズマによって電波が遮断されるので、使用できないと思われ

    ます。一般のレーダー式超音速ミサイルの速度は最大でもマッハ3程度なので

    この程度の速度領域になれば使用可能と思いますが、相手側は更に補足しや

    すくなるため弾道ミサイルを使うメリットはなくなります。

結論 対艦弾道ミサイルは現在のところ有用な攻撃手段にはなり得ないものと考えられます。また、矛と盾の故事ではありませんが、もし弾道対艦ミサイルが実用可能ならそれは中国が保有しようとしている空母をも無用の長物にしてしまいます。正に自分で自分の首を絞めることになってしまうのですが・・・。

   

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