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2011年6月30日 (木)

事実は小説よりも

昨年5月、H-2Aロケットによって打ち上げられた金星探査衛星「あかつき」は12月7日に軌道制御エンジンを噴射し、金星を回る軌道への投入を目指しましたが、エンジンの燃焼が不調に終わり、今も太陽の周りを回る軌道を飛行しています。「あかつき」から送られた各種データーの解析から、燃料制御のバルブが正常に作動しなかったことが付きとめられ、地上で再現実験を行った結果、ついに原因が解明されました。報道によれば、それは燃料と酸化剤が化学反応を起こし、生成された結晶がバルブの正常な作動を阻害したというものです。本来、燃料と酸化剤は問題のバルブによって遮断されて接触しない機構だったのですが、不具合によって酸化剤が逆流し気化した燃料に反応したようです。

と、ここまで読んであれッと思いました。似たような話を以前小説で読んだことがあるからです。池井戸 潤氏の「下町ロケット」は宇宙開発機構でロケット開発の責任者だった主人公が打ち上げ失敗の責任を取って退職し、父親が興した町工場を引き継ぎながら打ち上げ失敗の主原因だった燃料制御用のバルブを独自に開発し、ロケットエンジンのプライム企業に認められると言ったストーリーです。作中ではT-3となっていますが、H-2系ロケットの水素エンジンの燃焼試験で、同じく燃料フィルターに付着していた異物によってバルブの作動不良が発生するのですが、今回のトラブルとよく似た話でした。

「あかつき」は  4年後に金星に再接近しますので、その時再度軌道投入にチャレンジすることが期待されていました。しかし、今回のトラブルの原因が異物によるものである以上、機能の回復は困難ではないかと思われますが、折角の機会なのでなんとか成功することを願わずにはいられません。

※当初金星への再接近が2016、2017年でしたので2010年時点での6年後としていましたが、7月1日のJAXA発表では軌道修正が順調に行えれば2015年11月に軌道投入を行いたいとしていますので、再チャレンジまでの年数を4年に訂正させて頂きました。
7月2日 雨辰

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