新国立競技場は世界の笑いもの
政府は東京オリンピックのメイン会場となる新国立競技場を、当初のデザインのまま2500億円の工費で建設する方針を固めました。新競技場については多くの方面から費用や景観、維持費について異論が寄せられていましたが、当初案を押し切った形ですが、国民の一人として納得できません。
まず建設費ですが、とにかく高すぎます。ロンドンオリンピックのスタジアムで史上最高の800億円と言われていますが、軽く3倍を上回る金額で、こんな高い施設を作る意味が判りません。一般的に客席1席あたり100万円と言うのが相場だそうですが、それであればロンドンは妥当な金額であることが判ります。逆に1席あたり312.5万円と言う、とんでもない金額の異常さが際立ちます。
建設費が高くなったのは開閉式の屋根のベースとなる2本のアーチの存在ですが、このアーチについては巨大過ぎて具体的な工法など技術的に建設の目途が付いていないとも言われ、外観重視の設計であったことが問題をここまで大きくしてしまった元凶です。当初予算を1300億円としながら、コンペ時に建設費についてまともな試算をしなかったJSC(日本スポーツ振興センター)を始めとする関係者、特にコンペの責任者であった安藤忠雄氏の責任は重大だと思います。ここのところは今後責任を明確にして、背任による損害賠償も視野に入れるべきではないかと考えます。
景観についてもアーチによって最大高さが70mと周囲の木立の中に異質な無機物がそびえ立つ格好で、周囲の景観、自然との調和の観点が全く見られません。
また、開閉式の屋根にしたのは天然芝の養生のためですが、ドーム式のピッチの場合、芝の育成が上手くいかないことが多く、わざわざ建設費をつり上げてまで拘る理由が判りません。ちなみに札幌ドームの場合、天然芝を移動式のピッチに植え、普段はドームの外で養生して、試合時に移動して使用しています。この部分だけでも費用は割高になりそうですが、最大収容人員53、845人で建設費は422億円ですから1席あたり78.38万円と相場の100万円よりずいぶん安くなっています。
更に建設後の維持費ですが、従来の競技場の年間維持費が4億円ほどであったのに、新競技場では現時点で約45億円とされていますが、これもデザイン重視のツケです。SJCは年間の収入を50億円と見込んでいるようですが、見積もりが甘すぎるとの指摘があり思惑通りに運用できるか疑問視されています。また、屋根の材質の関係でコンサート時の騒音が環境基準を満たさない可能性も指摘されており、目論見通りの公演が可能か明らかになっていません。
このように、他の施設と比べて異様に高い割に多くの問題点を抱えており、海外から多くの観客を招く場としては甚だふさわしくありません。こんな建物を強行して作る行為は、正に世界の笑いものです。今からでも遅くはないと思いますので、こんないい加減なデザインは見直して、機能的でまともな設計をし、国民が納得する妥当な建設費で建ててこそ、国立競技場の名にふさわしいのではないでしょうか。
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