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2015年11月30日 (月)

中谷防衛相が弾道ミサイルの多層防御検討を表明

今年の5月、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験に成功したと内外に公表した北朝鮮が、28日に日本海での発射実験を行ないましたが、実験には失敗した模様です。北朝鮮はソ連からSLBMであるR-27を入手し、これをコピーしたミサイルを保有しているものと考えられていますが、海中からの発射能力を獲得したことについては疑問視されていました。今回の実験失敗で、運用開始までにはまだまだ時間がかかることを実証してしまったようです。

これより先の今月24日にハワイを訪問中の中谷防衛相が米軍施設を見学していますが、その後の記者会見でミサイル防衛に触れ、THAAD(サード、終末高々度地域防衛)ミサイル及びイージス・ショアミサイルの導入を検討することを表明しました。

現在我が国はイージス艦に搭載したSM-3でミッドコースを飛行中に迎撃し、万一迎撃に失敗した場合は地上に配備したPAC-3で迎撃する2段構えを取っていますが、問題はPAC-3の有効射程が20Km,最大射高が15Kmと極めて短いことです。これは開発の経緯から、既にあったPAC-2からスタートしたPAC-3が先行したためで、当時は他に手段がありませんでした。現在SM-3はブロック1A、Bが実戦配備され、迎撃実験ではほぼ100%近い確率で模擬標的の迎撃に成功しており、発展型のブロック2Aの開発も目途がついています。

しかし、今年の10月21日に米ミサイル防衛局がウェーク島で行なった迎撃実験では、SRBM(短距離弾道ミサイル)とSRBM(準中距離弾道ミサイル)の同時発射に対し、SRBMを地上のTHAADで、MRBMをイージス艦のSM-3で迎撃する予定でしたがSM-3に問題が起きて迎撃に失敗、最終的にTHAADで迎撃に成功しています。つまり、もしこれが本番だった場合、日本上空までわずか15Kmの地点まで迎撃手段がないことになり、多層防御の必要性が改めて認識されることとなりました。

THAADは終末防衛用ですが、射程200Kmと長く、PAC-3と同様に大気圏外の高度40~150Kmでの迎撃が可能ですから、高度500KmでSM-3、高度150KmでTHAAD、高度15KmでPAC-3と3段構えの防御が可能となります。また、イージス・ショアはSM-3の陸上版と言えるものですが、海上と違いメンテナンスや補充が自由に行なえることと、ミサイル自体も高度1000Kmでの迎撃が可能ではないかと推測されています。勿論ミサイル本体だけでなく、レーダーや制御システムなどに多額な費用が必要です。財政がひっ迫する中、どこまで安全保障に費用を割けるか、論議を呼ぶところですが、周辺に弾道ミサイル配備国がある以上、導入は不可避ではないでしょうか。

Pac3

PAC-3の発射機とPAC-3の模型です。

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