« 各地で断水続く | トップページ | 日産が ”猫バンバン” プロジェクト »

2016年1月27日 (水)

静岡市がヘリによる山岳救助で決断

静岡市が保有する消防ヘリが山岳救助を行なう際に、高度制限を3200m以下とする運用基準を改定したと発表しました。きっかけは2013年12月に発生した富士山での遭難者救助失敗事案です。ヘリによる山岳救助は大変危険な作業で、最近では岐阜県の防災ヘリ、若鮎2号(ベル412EP)が、2009年9月に北アルプス奥穂高岳ジャンダルム付近で救助作業中に岩壁に接触して墜落、乗員3名が死亡しました。また翌2010年8月には埼玉県の防災ヘリ、あらかわ1号(ユーロコプターAS365N3)が立木に接触して墜落、乗員5名が死亡する事故が起きています。

今回の事案は2013年12月1日午前11時過ぎに富士山に登山中の京都の4人パーティが頂上付近から滑落し、救助要請を行なったことからです。富士山での遭難救助は、高所での運用が可能な機体(アウグスタA109E)を保有する静岡県警が担っていましたが、当日は定期検査で出動ができなかったので、運用協定を結んでいる静岡市に出動要請がありました。

静岡市の消防ヘリ、カワセミ(ベル412EP)が出動し、現場で救助活動を行なったのは同日午後4時過ぎのことでした。当時の気象条件は不明ですが、午前中の時点で風速14m、気温氷点下14.3℃でしたので、それ以上の悪条件だったと推測されます。要救助者は下半身に保温シートが巻かれた状態のため、吊り上げベルトを股の間に通すことができないまま吊り上げを行ないましたが、収容直前に体が機体に接触し、ベルトより脱落し、地表より3mの地点で落下してしまいました。

救助隊員はこの時点で凍傷を負っており、これ以上の救助作業は危険と判断した隊長の判断で救助作業は中止され、ヘリは帰投したものです。翌日救助は再開されましたが、要救助者は心肺停止の状態で発見され、その後死亡が確認されました。

事故の後、静岡市はこの事案について検証を行った結果、静岡市の消防ヘリは同市の最高地点である南アルプスの間ノ岳(あいのだけ)3190mで救助訓練を行なっているが、それ以上の高度での救助訓練は行なっていないことから、安全を考慮し、出動は3200m以下の高度に制限したと言うものです。

静岡市が保有するカワセミのホバリング(空中に静止して浮揚する動作)限界高度は、仕様上4206m(燃料や機材・乗員を一定数に制限した状態、搭載燃料や乗員をこれより増やせば限界高度は低くなる)とされますので、3200mの制限は妥当と考えます。問題は県警に富士山の高度に対応する機体が1機しかないので、定期点検期間中は他県に応援を要請する必要があったのではないでしょうか。

P9060044

浜松市の消防ヘリ、はまかぜ(ユーロコプターAS465)です。

|

« 各地で断水続く | トップページ | 日産が ”猫バンバン” プロジェクト »

コメント

そのニュース、ネットで見て複雑な思いでいます。
確かに救助に困難をきたす場所でのアクシデントは自己責任ではあります。
充分理解できます。
しかし、人命がかかっています。
救助に困難をきたすなら、より高性能な物を、より高度なスキルを追求してほしい と一方では思えるのです。
命とは尊いもの。
もし、灯が消えそうな命があり、それが大切な家族の命だと想定すると、『お願いします。どうかお願いします。助けてやってください』と救助員の膝にすがりついたり、なりふり構わなく懇願するのではないでしょうか?
本当に深く考えさせられる事案です。

投稿: zero | 2016年1月28日 (木) 09時23分

zeroさん、コメントありがとうございます。

山岳救助に関しては私も友人が遭難した際に福島県警のヘリにお世話になった経験がありますので、複雑な思いです。

問題点は二つあると思います。一つは救助要請に対し、必ず応じなければならないかと言うことです。もちろん可能であれば、義務感に燃える隊員たちは直ぐにも出動してくれるでしょうが、そこは山岳地帯と言う特殊な条件下での作業となります。

事故事案のケースでは作業開始が午後4時過ぎですが、日没間近の時間帯であることを考えれば時間的に余裕はありません。また視界も極めて悪かったようです。
しかも、恐らく風速15mを超える強風下です。隊員が降下したり、要救助者を吊り上げるのに使用するホイストの使用基準は事故防止のため、15m以下と規定されています。

そう考えると、そもそもヘリによる救助はこの段階では無理があったように思われます。遭難者の救助は必要ですが、かと言って隊員の生命の安全を無視はできません。

二つ目は救助に失敗したら賠償責任を負うのかとの問題です。昨年末、遺族が静岡市に過失があったとして損害賠償を求める訴訟を起こしました。これでは命がけで救助に行っても、万一救助に失敗したら責任を問われるからと、出動見送りが増えてしまう気がします。

当時の現地の状況を考えれば、作業に着手することさえ困難な中で、隊員が体を張って活動したことを考えれば、残念ながら救助に失敗してしまったことは止むを得なかったと考えます。これは荒れた海で救助ボートから落ちた人を助けられなくても罪に問われないのと同じ理屈です。

大変長いコメントになってしまいましたが、下記の資料が参考になると思いますので、時間があれば、読んでみてください。

・消防防災ヘリコプターによる山岳救助のあり方に関する報告書(118P~127P)

http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h23/sangaku_kyujo_arikata/houkokusyo.pdf#search=%27%E5%B2%90%E9%98%9C%E7%9C%8C%E3%83%98%E3%83%AA+%E4%BA%8B%E6%95%85%27

投稿: 雨辰 | 2016年1月28日 (木) 10時38分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/171584/63130565

この記事へのトラックバック一覧です: 静岡市がヘリによる山岳救助で決断:

« 各地で断水続く | トップページ | 日産が ”猫バンバン” プロジェクト »