注意喚起しただけの外務省
バングラデシュの首都ダッカで起きたレストラン襲撃事件は痛ましいかぎりですが、事件を防ぐことはできなかったのか調べてみました。
自衛隊の軽装甲機動車。バングラデシュは国連PKOに派遣する要員数が世界で一番多い国ですが、国内の貧富の格差が大きく、与野党の政治勢力が激しく対立していることもあって治安が悪化していると言われています。
バングラデシュでは昨年10月に在留邦人の男性(66歳)がリキシャで移動中に、オートバイに乗った複数の男からピストルで銃撃され死亡する事件がありました。この時日本大使館は危険情報を出して、危険レベルをレベル2の不要不急の渡航の中止勧告とし、移動にはリキシャを使わず自動車を使うよう勧告し、この危険情報は現在も継続しています。
また「IS」によるラマダン中のテロ事件の予告がされたことに基づき、海外渡航者に向けて「イスラム過激派組織によるラマダン期間中のテロを呼びかける声明の発出に伴う注意喚起 」を発し、ラマダン中の金曜日にテロ事件が多発していること、テロに遭遇しないために不特定多数が集まるレストランやデパートへの訪問は十分注意するよう呼び掛けていました。
今回の事件は7月1日の金曜日、外国人多数が集まるレストランが襲撃されましたが、注意喚起文書が指摘する危険な条件そのままの状況で発生しています。事件現場は日本大使館や各国大使館に近く、比較的治安のよい場所と考えられていたようですが、まさに油断があったとしか思えません。
そもそも、昨年の銃撃事件ですが、その5日前にもダッカでイタリヤ人がバイクに乗った複数の男に銃撃され死亡する事件があり、双方の事件ともISバングラデシュ支部を名乗る人物から犯行声明が出されていました。この事件を受けて危険情報が出され、現在も継続しているのですが、果たしてこれが機能していたのか、はなはだ疑問です。
今回の犠牲者は外務省所管のJICA(独立法人国際協力機構)関連企業の社員たちでした。つまり、外務省とはかなり近い立場にいた関係者にも関わらず、テロの危険が高いとされるラマダン月の金曜日に、外国人が多く来店するレストランで8人が会食することを容認する状況判断がなされていたのではないかと言うことです。卑劣な実行犯を非難することは当然ですが、現地政府の治安維持能力やイスラム過激派の活発化する活動に対し、日本大使館が真剣な危機感を持っていたのか、極めて疑問に思えます。
危険情報や注意喚起はされていましたが、あたかも「落石注意」の看板と同様、注意して通行してくださいと言っているだけで、実効性がありません。昨年3月にはチュニジアの博物館で外国人観光客ばかりを狙ったイスラム過激派の襲撃事件があり、日本人3人を含む23人が死亡していますが、またも同じことが繰り返されてしまいました。外務省の現地に関する情勢判断や危険に対する分析力はテロに対して全く無力であり、早急な改善が必要です。
今回の事件で亡くなられた2名の女性の内、酒井夕子さんが浜松市の出身であることが判りました。改めてご冥福をお祈りいたします。
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コメント
今回の事件の犯人の1人が、昨年10月の日本人殺害事件で指名手配されていた容疑者と同一人物と特定されたようです。
ISを名乗る組織からの犯行声明もあった以上、外務省はPMSC(民間軍事会社 private military and security company)の導入の検討など、もっと本気で安全対策を講じる必要があったのではないでしょうか。
投稿: 雨辰 | 2016年7月 7日 (木) 09時37分