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2016年11月30日 (水)

新型護衛艦は対艦ミサイルの搭載なし

中国は豊富な財政を背景に軍拡路線をひた走っており、最新鋭の052D型駆逐艦を毎年3隻も増強し続けています。052D型は超音速の長距離対艦ミサイルY-12を搭載しており、防空能力と共に対水上艦への攻撃力を強化した戦闘艦です。

このような中国海軍に対峙する各国は対抗策を迫られていますが、武力侵攻を公言されている台湾は強力なコルベット(哨戒艦)で対抗しようとしています。このコルベットは満載排水量600トンほどの小型の艦船ですがステルス性を備え、雄風2型、3型の対艦ミサイルをそれぞれ8基搭載し、最大速力38ノットの速力を持っています。台湾は今後このコルベットを合計12隻建造するということで、中国艦船の接近を阻止する強力な抑止力に位置づけています。

一方、我が国ですが、沿岸海域を守る小型の護衛艦を更新するためDEXと呼ばれる3000トンクラスの新しいスタイルの高速護衛艦を22隻建造する計画を建てています。DEXは対艦ミサイルの搭載を見送るなど装備を限定することにより、従来600億円程かかっていた建造コストを300億円台に抑えて年間2隻のペースで建造したいとしています。速力は40ノットと台湾のコルベットよりも大型であるにもかかわらず、さらに高速となっており現場海域に急行することが可能となっています。

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護衛艦「やまぎり」に搭載されたハープーン対艦ミサイル発射機。6発を装備しています。

ところで、現在各国海軍が装備している艦対艦ミサイルですが、これまで実戦ではそれほど多く使用されていません。艦対艦ミサイルが初めて実戦に使用されたのは1967年のエイラート事件です。シナイ半島のポートサイド沖でエジプト軍のミサイル艇が発射したP-15ミサイルがイスラエルの駆逐艦エイラートを撃沈し、世界に衝撃に与えました。

その後1973年に艦船同士が対艦ミサイルを撃ち合ったラタキア沖海戦が起きましたが、1982年のフォークランド紛争では航空機による対艦ミサイルの発射はありましたが、艦船からの発射はありませんでした。

DEXが対艦ミサイルの非搭載を計画しているのはこうしたあまり実戦に使われていないことを考慮したものと思われますが、主な作戦海域が沿岸海域で敵艦と海戦になる可能性が少ないこともあるのではないかと思います。下図は対艦ミサイルを搭載可能なF-2戦闘機とP-3C哨戒機の配備基地とカバーする海域(公表されていませんので想像したものです)を記したものですが、DEXの守備範囲は概ね赤丸の範囲になると思われます。

Photo

赤丸はP-3Cの配備基地から500kmの範囲で、P-3Cは最大8発の対艦ミサイルを搭載可能で、2015年3月時点で69機が配備されており、今後はより高速のP-1哨戒機に更新されることになっています。緑の丸はF-2戦闘機の配備基地から1000Kmの範囲で、F-2は最大で4発の対艦ミサイルを搭載して4000Kmを飛行することが可能です。

こうした航空機のカバーがありますので、もし、DEXが攻撃されるようなことがあれば、直ちに大量の対艦ミサイルの返礼を受けることになります。よほどのことがない限り、うかつに手出しはできない筈です。

対艦ミサイルのない護衛艦では頼りない印象を受けるかもしれませんが、領海周辺は強力な航空力でカバーされており、台湾の新型コルベットのような武装は必ずしも必要でないことが判ります。

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