我が国もTHAAD導入か
1998年、北朝鮮の弾道ミサイルテポドンが日本列島上空を通過して太平洋に落下しました。慌てた日本政府は米国から弾道ミサイル防衛用ミサイル導入を決め。2007年にPAC3を入間基地に配備し、北朝鮮からの弾道防衛に備えました。
現在PAC3は全国6個の高射群、24高射隊に配備されていますが、最大射高15Km、射程20Kmと防御できる範囲が極めて狭いのが泣き所です。そのため来年度予算で性能を拡大したPAC3MSEを導入しようとしています。MSEの性能については公式の数字が明らかではありませんが、最大射高が20Km程度、射程は倍の40Kmとされていますが、それでも迎撃できる範囲は下図の通りです。
赤い丸が高射隊の配備された場所で、青い丸がPAC3MSEの射程の範囲です。
但し、PAC3は移動させることが可能なので、必要に応じて重要拠点周辺に展開させることが可能なので、この図の範囲しか防御できない訳ではありません。
※高射隊は一つの基地に2つの高射隊が配置されている場合があるので、赤丸の総数は24個になっていません。
現在は海上のイージス艦からSM-3ミサイルで高度500Km付近で迎撃し、撃ちもらしたものを地上のPAC3で迎撃すると言う2段構えですが、いかにも防衛できる範囲が狭すぎます。そこで、以前からもっと上空で迎撃が可能なTHAADミサイルの導入が検討されていましたが、導入コストが多大になることから具体化しませんでした。
ところが、今年になって北朝鮮の弾道ミサイルの発射が常態化したことや、これを受けて韓国がTHAADの配備を認める決定をしたことから我が国も本格的な導入の検討に入り、稲田防衛相が実戦配備中の米軍グアム基地に視察に行く予定でしたが、国会会期の延長によって中止となってしまいました。
ではTHAADの射程はと言いますと射高が70Km~150Km、射程が200Kmとなっています。射高が70Km以上となっているのは弾道ミサイルを捉えるセンサー(シーカーと言います)が赤外線を使用しているため、大気密度が高いと空気の摩擦で高温となってしまい、迎撃できなくなるからです。では、THAADの射程を地図で見てみますと。
PAC3の射程はほとんど点に近かったのに、THAADは面であることが良く判ります。従来、範囲外だった京阪神地区もカバーでき、広範囲の防衛が可能となり、北朝鮮の動向を受け、あわてて部隊を緊急展開させる必要はなくなります。
THAADの配備が正式に決まった訳ではありませんが、現在のSM-3に頼らざるを得ない状況から、実質的な2段構えの防御態勢が可能となりますので、早期の導入が望ましいと考えます。
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