企業モラルを問われる週刊文春
芸能人や政治家のスキャンダルを容赦なく暴き、売り上げを伸ばしてきた週刊文春は、世間に与えた影響の大きさから文春砲と呼ばれ、その存在を誇示して来ました。週刊文春は、これはと決めたターゲットについて地道に取材を続ける手法を取り、人手と時間をかけてスクープを物にする姿勢は他社からも一目置かれていました。
ところが、昨日になって突然週刊新潮が、週刊文春は発行日前に印刷する「中吊り」を事前に入手し、自社に有利になるよう取材活動に活用しており盗用に当たると紙面で明らかにしました。
週刊新潮によれば、2014年に朝日新聞が池上彰氏のコラムの掲載を拒否した件で、週刊文春の取った行動から自社の情報が洩れていることが発覚、漏洩源を徹底的に調べ上げたところ、刷り上がったばかりの「中吊り」を渡していた取次のトーハンから入手してコピーしていたことが判明したと言うことで、近くのコンビニで週刊文春の社員がコピーする瞬間を撮影した写真が掲載されています。
一方の当事者であるトーハンは、これまで前任者からの申し送りで、代々の担当者が週刊文春に「中吊り」を渡していたことを認めています。トーハンの担当者は「他社に関する情報なので配慮すべきだった」として、「今後は取りやめることを検討している」としていますが、不正に関与したと言う認識に欠けており、週刊新潮に対する謝罪の言葉もありません。出版物の流通最大手でありながら遵法意識が全く感じられず、これだけの事件なのに会社としての対応も取っておらず本当に無責任としか言いようがありません。
これに対し週刊文春は新谷編集長名で公式サイトに反論を掲載しましたが、内容には全く失望しました。曰く、「情報を不正、不法に入手したり、それをもって記事を書き換えたり、盗用したりした事実は一切ない」と述べながら、「他メディアの動向を把握するのは日常的なこと」とまるで今回のことを正当化するかのような主張です。
「中吊り」は取次に次号の掲載内容を知らせ、扱い部数を決定する資料として渡されたものであり、その内容はその出版社の機密事項です。これを知ることができれば、違う角度からの取材を行い、自社に有利な展開に持ち込むことが可能です。事実週刊文春は発行部数を伸ばし、週刊新潮は発行部数を減らしています。
この販売減の原因が不正行為によるものであるなら、訴訟沙汰になるのは必然です。損害賠償は勿論、威力業務妨害や不正競争防止法違反を問われる可能性が強いものと思われます。それだけに、証拠の写真を突き付けられながら、週刊文春が不正はしていないと言い切る姿勢には他社のモラルを追求しながら、自社については襟を正そうとしない驕りを感ぜずにはいられません。
| 固定リンク
コメント