弾道ミサイル防衛は愚行なのか?
現地時間の5月30日に、米国がICBMに見立てた標的にめがけてGBIを発射し、迎撃に成功したことは記事にしたばかりですが、このような防衛力の整備の姿勢を疑問視する動きがありましたので、これについて取り上げます。
6月1日付の中日・東京新聞が社説で、「北ミサイル防衛」「費用対効果を考えたい」との記事を掲載しましたが、言っていることがサッパリ理解できません。ミサイル防衛は大変高度な技術が必要であり、開発や導入するのに多額の費用がかかるのはその通りです。
しかし、だからと言って費用がかさむので、迎撃せずに着弾して死者が出ても仕方がないと言うのに等しい物言いはどう見ても異常です。社説は常套区の「軍事的圧力ばかりでは偶発的衝突の危険性が増す」「外交によって危機を鎮静化する努力を続けたい」と結んでいます。
しかし、北朝鮮は日本は北に対して意地悪な態度を取るので、これまでは在日米軍基地をミサイルの標的にしてきたが、それ以外も標的にするぞと恫喝しています。ミサイル防衛の努力以外に道はありません。
また、ネット配信のJBpressが「イージス・アショア」は百害あって一利なし 「THAAD」導入こそ実行すべき とのタイトルの記事を掲載していますが、同意できません。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50173
イージス・アショアはイージス艦に搭載したイージスシステムを陸上に設置したもので、イージス艦のように補給や定期検査のために帰港する必要がなく、中日・東京新聞が問題視した費用対効果に優れているとされており、使用するSM-3ブロック2Aミサイルは射程が2000Km、最大射高は2000Kmとも言われ、ノドンミサイルを迎撃可能とされています。
一方のTHAADは高度70 40Kmから150Kmの終末段階を迎撃するミサイルで、射程は最大200Kmとされています。
この二つの射程を日本列島に配置してみたのが下の図です。但しイ-ジス・アショアの方は半径1000Kmの円で表しています。これは例え2000Kmの射程があったとしても、遠方の高速のミサイルを追いかけて迎え撃つのには時間が掛かりますので、真正面から来る以外のケースではあまり役に立たないのと、そもそも北朝鮮との距離がそんないないからです。
記事はイージス・アショアは海自の負担を増すから問題としていますが、百害と言えるでしょうか?一方のTHAADは陸自が担当するとしても人員を捻出する負担は変わりません。
THAADはSM-3が迎撃に失敗した場合に有効ですが、図の通り守備範囲が狭いので、最低でも6か所への配備が必要です。イージス・アショアが1システムが、およそ800億円、THAADが1セット約1000億円と言われていますので、費用の点では断然イージス・アショアに軍配が上がります。
イージス・アショアもTHAADもそれぞれ開発の経緯が違いますので、それぞれの特性を生かした活用が求められますが、この記事は最初に結論ありきで、公正な評価をしていないので記事として評価に値しません。
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