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2017年9月10日 (日)

先人の主張を捻じ曲げて報じる中日新聞

今朝の中日新聞の社説が、北朝鮮の弾道ミサイル問題に重ね合わせて、桐生悠々の評論「関東防空演習を嗤う」を取り上げていました。長くなりますが、記事の一部を引用します。

~ 本誌を発行する中日新聞社の前身の一つである新愛知新聞や、長野の信濃毎日新聞などで編集、論説の総責任者である主筆を務めた、われわれの大先輩です。

新愛知新聞時代には、全国に広がった米騒動の責任を新聞に押し付けようとした寺内正毅(まさたけ)内閣を厳しく批判する社説の筆を執り、総辞職に追い込んだ気骨の新聞人です。

その筆法(ひっぽう)は軍部にも向けられます。信毎時代の三三(同八)八月十一日付の評論「関東防空演習を嗤う」です。掲載の前々日から行われていた陸軍の防空演習は、敵機を東京上空で迎え撃つことを想定していました。悠々は、全てを撃ち落とすことはできず、攻撃を免れた敵機が爆弾を投下し、木造家屋が多い東京を「一挙に焦土たらしめるだろう」としてきします。 ~

そして

~ 悠々の評論の核心は、非現実的な想定は無意味なばかりか、有害ですらある、という点にあるのではないでしょうか ~

と結論付けています。

しかし、この結論は事実とは言いがたいものです。悠々の主張は以下の通りで、文章が長いので、抜粋して紹介します。

~ 従ってかかる架空的なる演習を行っても、実際には、さほど役立たないだろうことを想像するものである。

だから、敵機を関東の空に、帝都の空に、迎え撃つということは、我軍の敗北そのものである。この危険以前に於て、我機は、途中これを迎え撃って、これを射落とすか、またはこれを撃退しなければならない。

与えられた敵国の機の航路は、既に定まっている、従ってこれに対する防禦も、また既に定められていなければならない。この場合、たとい幾つかの航路があるにしても、その航路も略予定されているから、これに対して水を漏らさぬ防禦方法を講じ、敵機をして断じて我領土に入らしめてはならない。~

悠々の主張は、防衛線を国土上空に置くのは設定の誤りで、もっと手前の海上で迎撃すべきと言っているのであって、有害などとは一言も言っていません。従って、先の社説の主張は社説の筆者のものであって、悠々の主張とするのはいかがなものかと思います。

最近の同紙の姿勢からして、自社の主張に沿った内容にしたかったのでしょうが、これでは事実の偏向であり、大先輩に対してあまりに失礼だと言うものです。
再び引用です。

~ その観点から、国内の各所で行われつつある、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えた」住民の避難訓練を見るとどうなるのか。

とはいえ、日本の領域内に着弾する場合、発射から数分しかありません。政府は屋外にいる場合は近くの頑丈な建物や地下への避難を呼びかけていますが、そうしたものがない地方の都市や町村では、短時間では避難のしようがないのが、現実です。

住民の避難訓練も同様です。ミサイル発射を想定した国と自治体による合同の避難訓練が今年三月以降、既に全国の十四カ所で行われていますが、専門家からは訓練の想定や有効性を疑問視する声が出ています。 ~

悠々の観点からすれば、ミサイル防衛を充実させ、陸地に飛来する前に海上で迎撃すべきと言うことになるでしょう。また、専門家とあいまいな表現をしていますが、そのような主張をしている安全保障の専門家を見たことがありませんので、どんな経歴で立場の人物なのかを明らかにして欲しいところです。

着弾時の避難方法については内閣官房が様々な場面について説明しています。何もかくれるものがない場合は、地面に伏せて頭部を保護するだけでも、致命傷を防ぐ可能性が高まります。こうした避難方法は、ミサイルやロケット弾の攻撃を数多く受けてきたイスラエルで考案・実践されているもので、有効性が確認され、米国でも取り入れています。

新聞社は、当然こうした情報を知り得る立場にある訳ですが、国民に啓もうを行うのではなく、避難を無意味だと言わんばかりの主張を広めようとすることは、大先輩の桐生悠々の意思に大きく背くことになると思います。

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コメント

稀代の言論人、桐生悠々の文章をこう読むとはね…
桐生悠々が現代日本を見ていたなら、
「飛行機よりも遥かに速度の早いミサイルから身を守る方法などあるものかw」と一笑に付したやろねw

政府の言葉を何でも信じていたら、痛い目どころじゃ済みませんでw
雨辰さんが知っての通り、あっしは大学時代に解放運動をやってはいたが、運動そのものに疲れ切って離れてしまい、しまいには左翼そのものを憎むようになった。
しかし、今の安倍政権になってからの愚劣ぶりも嫌になって、彼らを支えるレイシスト共への抗議活動に参加したり、政権打倒デモにも参加したりしてますで。
最早左右のイデオロギーなどどうでもいい。あなたの主張がおかしいから、皮肉ってるだけなんですよ。

投稿: 出がらし紋次郎 | 2017年9月10日 (日) 15時09分

紋次郎さん、どうもです。

桐生の評論は中日新聞が書いたような反軍部の趣旨ではなく、もっと軍事的な観点から防空演習を批判したものです。

昭和八年ですから、現在とは科学技術もかけ離れていますが、それでも赤外線による爆撃地点の探索とか、無人機による攻撃を予想したり、無線通信による敵機の通報とか、当時なりの知識を総動員して、国家・国民の安全保障を案ずる論旨だと解釈しています。

これ以外の文章を読んでいませんので、彼の思想的な立場については触れませんが、少なくともあの文章を素直に読めば、中日新聞の社説は誤用としか言いようがありません。

投稿: 雨辰 | 2017年9月10日 (日) 15時30分

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