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2017年12月10日 (日)

PAC-3、弾道ミサイルの迎撃に失敗かと報道

現在の我が国は北の弾道ミサイルに対して、海上のイージス艦からのSM-3と陸上各地に配備しているPAC-3での迎撃で防禦態勢を敷いています。1発当たりの迎撃成功率はSM-3で約85%、PAC-3ではほぼ100%と言われていますが、遠距離の高高度でミサイルの中間コースを迎撃するSM-3と違い、PAC-3では突入してくるミサイルと相対する形で近距離で迎え撃つことになりますので、それだけ迎撃成功率が高くなるのではと考えられます。PAC-3については文字通り最後の守り神と言った存在です。

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さて、そんな守護神PAC-3について気になる報道がありました。4日付のニューヨークタイムズ紙によれば、11月6日にイエメンの武装勢力からサウジアラビアのリヤド国際空港に向けて弾道ミサイル攻撃の際、サウジ側はPAC-3で迎撃に成功したと発表していたが、実際は5発のPAC-3全てが撃墜に失敗したと言うことです。

幸い、ミサイルの命中精度が低く、空港から700m離れた地点に着弾して大きな被害は免れたものの、発射されたPAC-3は弾頭を分離した後、そのまま飛行したミサイル本体を迎撃してしまったとしています。

10日現在、この件に関してはミサイルの残骸からイラン企業の刻印が見つかったとの報道がある以外続報はありませんが、気になる点がいくつか残ります。

第一点は発射されたミサイルが何発だったのかと言うことです。700m離れた地点に着弾と言うことを信じれば1発となりますが、1発のミサイルに5発のPAC-3を発射することは考え難いことです。

通常は迎撃失敗を避けるため、1発のミサイルに対し、2発のPAC-3を発射するのが基本だとすれば、5発撃つ理由が判りません。仮に第一撃で迎撃に失敗し、第二撃を発射しようとしても、そもそもPAC-3の迎撃高度は20Kmですから、失敗を確認してから発射するまでの時間的余裕はほとんどありません。

第二点は、弾頭に直撃せずに、弾頭を切り離した本体に命中したとのことですが、これもにわかには信じられません。

パトリオットの開発途上では航空機用のPAC-1やPAC-2で迎撃に失敗したことがありますが、弾道ミサイルの迎撃用に改良されたPAC-3では、弾頭が切り離されることを前提にしています。また、ミサイルが弾頭を切り離すのは迎撃を避ける意味合いもありますが、本質的には燃焼が終わり、邪魔になった本体を切り離すことによって射程を伸ばすことにあります。

空力特性を考慮された弾頭と違い、切り離された本体は空気抵抗が大きいのでそれよりも手前に落下するはずです。短距離ならともかく、イエメン国境からリヤドまでは600Km以上ありますので、弾頭と本体がほぼ同じ位置に落下するとは考えられません。

第三に製造メーカーのレイセオンが沈黙したままであることです。米国政府の意向を受けている可能性がありますが、もし本当に失敗したのなら、何らかのコメントがあるのではないかと思われます。

以上のことを考え合わせると、現時点で、この報道については事実として受け入れられないのではないかと考えますが、推測としてPAC-3には弾道ミサイルとは別に航空機撃墜用のモードがありますので、もし誤操作で弾道ミサイルに対して航空機モードで対応すれば、本体を迎撃してしまう事態が起こる可能性はあるのではないかと思います。

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