サウジの弾道ミサイル迎撃失敗はPAC-2の可能性
昨日はイージスアショアについてハワイ発の記事が報道されるなど、相変わらず弾道ミサイル防衛に対しての関心が高まっていますが、弾道ミサイルと対峙しているのは日・米・韓だけではありません。
イエメン内戦で首都サヌアを含む北西部一帯を支配しているフーシ派は、イランからミサイルの供与などを受けてイランの宿敵サウジアラビアを弾道ミサイルで攻撃しています。これに対し、サウジアラビアはPAC-3で迎撃したとしていますが、これについて昨年12月6日付のニューズウィーク日本版がPAC-3の信頼性について疑問があるとして取り上げていました。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/12/pac3-1.php
この記事の内容については現在のPAC-3の能力から見て、腑に落ちない点が多かったので、当ブログでも12月10日の記事で取り上げました。
http://himajin.cocolog-enshu.com/club/2017/12/pac-3-d4f1.html
そして本日、この疑問に関する一つの答えとなる記事を11日付けの毎日新聞Web版が掲載しているのを見つけましたので紹介します。
http://mainichi.jp/articles/20180112/k00/00m/030/098000c
以下引用です。
~だが、サウジのBMD能力には疑問を投げかける専門家もいる。米ジェームズ・マーティン不拡散研究センターの核・ミサイル専門家、ジェフリー・ルイス博士らのチームは、昨年11月に首都リヤドの国際空港が攻撃を受けた際に「弾頭でなく胴体部分を迎撃した可能性が高い」と指摘した。弾頭が破壊されなければ地上で爆発し被害が大きくなる可能性がある。
サウジは弾道ミサイル迎撃のため、米レイセオン製の「PAC2」と、より迎撃能力が高いとされ日本も導入済みの米ロッキードマーチン製「PAC3」の両方を調達済みだ。しかし専門家の多くは「PAC3はまだ実戦配備されていない」と見ている。 ~
PAC-2は湾岸戦争で使用されたPAC-1の改良型で、基本型と弾頭とミサイル本体とを識別できるようにしたPAC-2GEMとがあります。推測ですが、度重なる弾道ミサイル攻勢で、手持ちのPAC-2GEMが底をついてしまい、11月のケースでは止む無く基本型を使ったところ、弾頭の迎撃はできなかったということではないでしょうか。もし、そうであるならば、1発のミサイルに5発を発射した理由もうなずけます。
その後もロッキードマーチンからは何のコメントもありませんし、米軍も特にアクションを起こしていませんので、PAC-3の基本的性能に対し、信頼性が疑われる事態ではなかったことは間違いないようです。
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