空自救難ヘリの墜落原因はバーティゴ
昨年10月の夕方、夜間救助訓練に離陸した空自浜松基地所属の救難ヘリUH-60Jが、離陸後およそ11分後に浜松市の沖合約31Kmの海上にに墜落し、乗員4名が行方不明になる事故が発生。3名はその後海底から遺体となって収容されましたが、1名は今も行方不明になったままとなっている事故の調査報告書が14日に公表されました。
http://www.mod.go.jp/asdf/news/houdou/H29/300214.pdf
報告書によれば、当日は月明かりもなく、NVG(暗視ゴーグル)を着用しても海面が見にくい条件の中、前方の雲を避けるために高度約300mから150mに高度を下げる操作をしました。ところが、降下を確認する機器の応答性が悪く、機長が実際の高度よりも高く認識したまま海面への接近に気付かず、他の乗員も機長に助言をしなかったことから高度異常に気付かなかったと思われる。また海面への接近を知らせる高度警報器が高度75m付近で鳴ったにもかかわらず、機長が発話中で気づかず、そのまま海面に激突したものと推定されたものです。
墜落前日のエアフェスタ浜松2017で展示されていた事故機のUH-60Jです。
当該ヘリは離陸からわずか11分後に墜落し、離陸後5分に行われた管制塔の交信でも特に異常を伝えていませんでしたので、今回のAH-64Dの事故同様に突然機体にトラブルが生じたのではないかと考えていましたが、機長の空間識失調(バーティゴ)による操縦ミスと結論付けられたのは意外でした。今回の事故は高度を確認するのに昇降率計を用い、その表示に若干タイムラグがあったことに起因したようです。素人考えでは高度計があるのなら、なぜ高度計を使用しなかったのか大変疑問ですが、パイロットにはそうする事情があったと言うことかも知れません。
空自は再発防止策として、以下の5項目を挙げています。
①飛行諸元の確認等、飛行に係る基本操作を教育により再徹底。
②乗組員の連携要領を教育により再徹底。
③電波高度警報への対応要領を教育により再徹底。
④NVGの運用要領の見直し、及び教育により再徹底。
⑤昇降率計の表示遅延の是正。
何やら「教育により再徹底。」のオンパレードですが気になる項目があります。
③の電波高度警報ですが、果たして警報音の音量は適正だったのかと言うことです。そもそも音量が調整できるものかも判りませんが、もし音量が適正でない設定となっていたら、それこそ事故の大きな要因であったのではないでしょうか。
また、⑤の昇降率計の表示遅延の是正ですが、遅延が機器の特性でなく是正できるものなら、何故事前に是正をしなかったのかが大いに気になります。また、そのことをパイロットが知らなかったとすれば重大な教育訓練の不備だったことになります。
今回の報告書はもっともらしいことが書かれていますが、空自としての組織に問題がなかったのかについて何ら言及しておらず、大変物足りない内容です。再発防止策もどちらかと言えばソフト面での対策が大半ですが、間違いをしてしまうのが人間なので、もっとハード対策に重点を置くべきではないかと考えます。ともあれ、今回の事故を教訓として、再発防止に努めて欲しいものです。
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