北方領土二島先行返還論
シンガポールでの日露首脳会談によって、日露平和友好条約締結に向け、1956年の日ソ共同宣言に謳われた、条約締結後に歯舞、色丹島を引き渡す件にについて協議を進めることになりました。これは事実上歯舞、色丹島の返還と引き換えに平和友好条約を結ぶことを意味し、国内では従来の四島一括返還の方針を大きく転換したものと受け止められています。
北方四島の位置関係です。 (出典:国土地理院の地理院地図を加工)
軍事的に見ると、ロシアはウラジオストックに極東・太平洋を管轄する太平洋艦隊の母港を持っており、宗谷海峡を抜けて太平洋に進出しています。従ってこの地域は軍事的に大変重要であり、最近になって国後、択捉島に地対艦ミサイル部隊を駐留させたり、択捉島に最新のSu-35戦闘機を配備しており、余程の情勢の変化がない限り、ここから撤退する選択肢は考えられません。これに対し、その南側に位置する歯舞、色丹島は面積も小さく軍事的な意味はあまりありません。
歯舞、色丹島と根室との位置関係です。 (出典:国土地理院の地理院地図を加工)
根室の納沙布岬と歯舞群島の貝殻島との距離はわずか3.7Kmです。この周辺は昆布を中心とした海産物が豊富なため、これまでロシア側とのトラブルが多発し、銃撃によって死傷したり拿捕されて抑留される事件が数多く起きています。
日本人の感情としては、日本の降伏を見越し、武装解除した後に一方的に攻撃を加えて占領された北方領土については固有の領土であり、四島一括返還が譲れない一線との思いがありますが、現実的にはロシアの実効支配の固定化が進む一方です。割り切れなさは残りますが、この際二島返還交渉に臨むことも致し方ないことかと考えます。
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