« OH-1ヘリが飛行再開 | トップページ | 新元号まであとわずか »

2019年3月 3日 (日)

防衛省が長距離空対空ミサイルの開発を計画

インドとパキスタン、双方が領有を主張するカシミール地方でのテロ攻撃を巡ってインド側が戦闘機による爆撃を行ったのに対し、パキスタンも戦闘機を出動させて空軍同士の衝突となり、インド軍の戦闘機1機が空対空ミサイルによって撃墜されました。このように現代では対空ミサイルの性能が軍事的優劣を左右しますが、それ以外にも相手の航空機の存在を探知する早期警戒機の保有の有無も重要視されています。

戦闘機には相手の航空機を探知できるレーダーが装備されていますが、機体サイズの制限によって、探知できる距離に制約があります。一方、早期警戒機では一般的に機外に円盤型の大型アンテナを備えているため、はるか遠方から相手を捉えることが可能です。

P5210007r16

空自のE-767早期警戒管制機です。

Pb250093r18

こちらはE-2C早期警戒機です。空自はE-2Cに加えて、能力向上型であるE-2Dを導入することにしていますが、E-2Dはステルス機の探知も可能とされています。

早期警戒機は各国で保有が進められていますが、侵入機を迎撃する空自にとっても脅威となる存在です。これに対抗するため、相手のレーダーを無効化する電子戦機の導入が計画されていますが、新たに早期警戒機そのものを撃墜できるLRMと称する長距離空対空ミサイルの開発を計画しているようです。LRMはLONG RANGE MISAILEの頭文字を取ったものです。

戦闘機が搭載している一般的な空対空ミサイルは射程が100Km程度ですが、早期警戒機はその何倍かの距離で相手の戦闘機を探知できるため、ミサイルで攻撃しようとしても、ミサイルの射程までに近寄る間に逃げられてしまいます。そこではるか遠方から相手を攻撃できる長距離空対空ミサイルを保有すれば、相手の早期警戒機は我が国に近寄ることができなくなりますので、相手の戦闘機の攻撃力を制限することにつながります。

現在判っている情報では、1発あたりの価格が5億円、重量が1トン程度を目指すとされています。価格が5億円と言えばイージス艦に搭載するSM-6ミサイルの価格に相当します。SM-6はSM-2の能力向上型ですが、射程が大幅に向上して460Kmに延伸しており、長距離対空ミサイルと呼ぶにふさわしい能力です。

一方、我が国にもSM-6に迫る能力のミサイルを開発中です。それはASM-3対艦ミサイルです。ASM-3は従来の対艦ミサイルと違って、超音速のミサイルで、射程は200Km以上とされており、重量は約900Kmとされています。ASM-3は開発が終了したとされましたが、何故か量産化が保留されています。理由として、200Kmでは射程が不足なので、搭載燃料を増やして射程を更に延ばす改良が求められているからとする説があります。

Photo

SM-6の概念図です。機体中ほどの安定翼が対空ミサイルの特徴的な外観です。

Photo_2

ASM-3の概念図です。対艦ミサイルは対空ミサイルのような激しい機動が求められませんので安定翼は見られません。

全くの推測ですが、LRMはこのASM-3に手を加えて対空ミサイルに転用したものではないかと考えます。ASM-3であれば最高速度がマッハ3と言われており、対空ミサイルとして十分通用します。また、F-2戦闘機で運用することで各種試験を行っていますので、類似の機体規模であれば、技術的なハードルがかなり低くなります。来年度の予算にLRMの開発費は計上されていませんので、着手は2020年からと思われますが、既存技術を活用することで、開発期間の短縮も可能ではないかと推測します。

|

« OH-1ヘリが飛行再開 | トップページ | 新元号まであとわずか »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 防衛省が長距離空対空ミサイルの開発を計画:

« OH-1ヘリが飛行再開 | トップページ | 新元号まであとわずか »