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2019年7月 6日 (土)

対艦弾道ミサイルは脅威か

かつて中国が台湾に対して軍事的圧力を強めた時、米国は空母打撃群を台湾近海に展開させ中国を力で沈黙させました。以後、中国は空母の保有を目指すと共に、対抗手段を講じることとなりました。その一つが対艦弾道ミサイルです。弾道ミサイルは射程が長いので、防衛がしやすい大陸の奥深くから、はるか遠くの洋上にいる空母に攻撃を加えることが可能だとするものです。中国はMRBM(準中距離弾道ミサイル)DF-21の改良型を開発し、すでに実戦配備していると公表していますが、対艦弾道ミサイルそのものの性能については一切明らかにしていません。

米国メディアが伝えるところでは、米国国防省が中国が南シナ海で対艦弾道ミサイル6発の発射実験を行ったとして中国を非難したと言うことです。米国はこれより前の6月29、30日に弾道ミサイル偵察機のRC-135コブラボールを飛ばしていますので、この期間に発射実験が行われたものと見られます。また、佐世保に配備されている弾道ミサイル追跡艦の「ハワード・O・ローレンス」が6月14日にシンガポールのドックを出港したと見られていますので、発射実験の監視に参加していたものと考えられ、米国にとっては格好の情報収集の機会になった模様です。

では対艦弾道ミサイルとは本当に脅威なのかについて考えてみたいと思います。通常の対艦ミサイルは、相手の探知を避けるために、レーダーに捉え難い海面すれすれを飛翔します。しかし、弾道ミサイルは発射時点から探知されるうえに、護衛のイージス艦から迎撃がしやすいと言われるヘッドオンの状態で迎撃が可能です。わざわざ姿を曝す攻撃方法がどこまで有効か疑問です。また、中国以外にこの手のミサイルを配備している国がないことも有効性を疑わせます。

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迎撃ミサイルSM-3ブロック2Aの発射シーンです。 (出典:防衛省)

また、一般の弾道ミサイルは固定された地上目標を狙うのが一般的です。空母のような移動する相手を狙うことは技術的にはかなりの困難が伴います。一般のミサイルは発射後、大気圏外で弾頭を切り離します。その後弾頭は大気圏に再突入しますが、その際に大気との摩擦で高温となり、プラズマに包まれて電波が遮断されます。高度としては70~40Kmの間と考えられます。従って、最終的に70Km以上の高度で相手を捕らえて突入することが必要ではないかと思われます。MRBMの突入速度は2~3Km/秒なので、高度80Kmから海面に到達する時間を単純計算すれば、80÷3≒26.7秒です。一方空母の速度を30ノットとすると1秒間に移動する距離は15.4mです。26.7秒では411mとなります。元々のDF-21の命中精度(半数が到達半径)はおよそ300mと言われていますので、411m先の未来位置に正確に着弾させるのはかなり困難ではないかと思われます。また、相手のレーダー探知を避けるため、相手のレーダーに向かって目つぶしのように妨害電波を照射して防衛行動をとりますので、そもそも正確な位置測定が行えるかも疑問です。

以上の事を考え合わせると、現時点で高い脅威であるとは到底考えられません。油断は禁物ですが、対抗手段で十分防禦可能と見るのが妥当ではないでしょうか。

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