ウクライナ機撃墜はイラン革命防衛隊の誤射
1月8日午後6時10分、乗員・乗客176名を乗せ、イランの首都テヘランのエマーム・ホメイニ国際空港を離陸したウクライナ国際航空の752便は、高度2400mを飛行中の同14分に位置データーの通信が途絶し、同22分に墜落が確認されました。直後にイラン当局は、同機は技術的問題により墜落したと発表しましたが、その理由については明らかにしませんでした。この事故の生存者はおらず、全員が死亡したと見られています。
その後、現場からロシア製の地対空ミサイル9M331(SA-15)の先端部分が見つかったとする写真がネットに出回り、その後752便にミサイルが命中する瞬間の動画も配信されました。これについてイラン側は事実でなく、印象操作だと強く主張しました。その後、米国が墜落時間のほぼ同時刻、現場付近からミサイル二発が発射されたのを、早期警戒衛星が探知していたことを明らかにしましたが、イラン側は相変わらず否定の姿勢を変えませんでした。しかし、流石にここまで客観的な証拠がそろうと、いかにイランとは言え撃墜への関与を否定し続けることは無理だと悟ったと見え、11日になって革命防衛隊がミサイルを誤射したことを認め、謝罪の姿勢を示しました。
これは驚くべき事態で、一国の政府が航空機の墜落と言う重大事故への関与を隠蔽し、虚偽の事実を主張していた訳で同国の国際的信用は地に落ちました。そればかりではなく、今回の事故ではイラン人82名が亡くなっていましたので、自国民さえ欺いていたとして、政府ばかりでなく最高指導者のハメネイ師まで公然と非難する事態となっています。
現在までのところ、事件の真相は判っていません。軍隊が自国内で民間機を撃墜することはあり得ませんので、誤射であることは間違いありません。今回発射された9M331ミサイルは直径23.5cm、全長2.9m、重量167Kgと小型で、最大射程も12Kmほどしかありません。また、ミサイルの発射は搭載母機である9K331単独で行えますが、搭載レーダーの探知距離は25Kmと短く、単独で目標を探知・攻撃することはかなり困難と思われます。しかも展開先が民間空港近くですから、民間機の機影を捕らえる可能性は高く、敵機と民間機を識別することは必須となっていた筈です。このような場合、通常は電波による敵味方識別装置(IFF)を使って民間機か軍用機かを識別しますが、旅客機ともなればレーダー画面上のみでも判別できたのではないかと思われますので、通常は起こり得ない失態です。イラン側がどこまで真実を明らかにするかは判りませんが、イラン側の発表を待つしかありません。
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