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2020年8月14日 (金)

グローバルホークの導入が中止か

先頃、河野防衛相が突然地上配備型イージスシステム、イージスアショアの導入中止を発表して世間を驚かせましたが、今度は滞空型無人偵察機、RQ-4Bグローバルホーク(以下グロホ)の導入中止を検討中と時事通信が伝えています。グロホは、米軍が運用中の滞空型無人偵察機で、18000m上空を30時間飛行しながら地上を偵察・監視でき、地上を移動する目標を継続的に追跡することが可能です。

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RQ-4Bグローバルホーク (出典:防衛省)

イージスアショアについては、北朝鮮の弾道ミサイル防衛には欠かせないとして、導入を決定していたにもかかわらず、発射時のブースター落下問題をめぐる不手際で、設置予定地の反対にあい、配備基地の変更も検討されないまま導入を中止するという極めてお粗末な展開となりましたが、未だに代替装備の方向性が打ち出されていません。安全保障の重要政策の決定について、ちょっと思慮が欠けているのでは危惧の念が拭えません。

グロホについても、米軍の運用を見て導入を決めたようですが、当初から周辺を広域な海洋に囲まれている我が国では、地上監視型のグロホではなく、海洋監視型のトリトンの方が望ましいのではないかとの声がありましたが、グロホの導入に突き進んだ経緯があります。米軍では、イラクやアフガニスタンの内陸で、反対派武装勢力の発見・監視に当たっていますが、高性能の対空兵器を持っていない相手だからこそ通用しています。ところが、長射程の対空ミサイルを持っているイランは、ペルシャ湾の公海上を飛行していたグロホを領空侵犯をしたとして撃墜してしまいました。この事件について米軍は軍事行動を取りませんでしたが、大変効果な機体でありながら、簡単に撃墜を許してしまうのは運用側にとっては困った事態です。また、

米軍がグロホのブロック20と30の運用を中止する動きが出たことも懸念材料となっています。我が国は早期警戒管制機にE-767を導入しましたが、この機体は我が国だけが使っています。しかし、搭載している機材が米軍が多数配備しているE-3と同じであるため、アップグレードやメンテナンスに困ることはありません。一方で、オーストラリアや韓国は少し小型で価格の安いE-737を導入しましたが、こちらは米軍が採用していないため、米軍によるアップグレードは行われず、アップグレードは運用側がすべての費用を負担しなければなりません。米軍ののブロック30が運用中止になれば、かなりの費用増になることが予想され、このことが導入にためらいを生んだ可能性があります。実際、攻撃ヘリにおいては、当初62機の導入を予定していたAH-64Dアパッチロングボウの調達を、ブロックⅡの生産中止によって13機で打ち切っています。

我が国では南西諸島周辺の監視や、北朝鮮の監視を運用目的としていましたが、中国も北朝鮮も戦闘機や対空ミサイルを持っていますので、緊張が高まる状況では果たして有効に運用できるのかが懸念されます。監視や偵察能力としては、現在導入が進んでいるF-35戦闘機は、はるか遠方の地上を監視できる能力を備えており、偵察機として使うのに十分な能力を備えています。また、ステルス機であるため、相手側に発見されにくく、もし、攻撃を受けても、探知したり反撃することも可能です。そんなことから、偵察に特化したグロホにこだわるよりも、その分の費用を他の分野に振り向けようとの意向もあるかも知れません。グロホは当初見積もりで、関連の機材を含めて3機で510億円でしたが、その後23%の増額になっていると言うことなので、およそ630億円となります 。

自衛隊はF-4ファントムの偵察機を保有・運用して来ましたが、機材が時代遅れであるばかりか、期待も老朽化が進んでいますが、後継機は導入できていません。F-35のステルス性と地上監視能力を見れば、中途半端な偵察機の導入は不要となった可能性は十分考えられます。

以上のことを勘案すれば、グロホを積極的に導入する必然性を見出しにくいのは事実です。イージスアショアの導入が中止になったことで、一旦決めた装備の導入を撤回することへのハードルが著しく下がっていますので、グロホの導入中止となる可能性はかなり高いのではと思われます。

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