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2020年8月 4日 (火)

負の遺産

今年も、まもなく終戦の日を迎えますが、今年は戦後75年目の節目の年となっていますが、沖縄戦の司令部となった首里城地下の司令部跡が公開されました。米軍の攻撃を避けるため、地下に壕を掘削して構築したものですが、撤退時に爆破処理されたのと、時間の経過によって崩落の危険があるため、普段は一般公開されていません。

ところで、この公開を伝えた中日新聞の記事では、この司令部跡について「負の遺産」と称していますが、この呼び方に違和感を感じています。日本が米・英国とアジア諸国を巻き込んで、第二次大戦の当事者となったのは、紛れもない歴史の事実であり、その結果、国土は焦土となり、多くの人が亡くなったのも事実です。しかしながら、歴史において正、とか負とか位置付けるのは、ちょっとおかしいのではないかと思います。有史以前から人類は多くの戦い、紛争を起こし、たくさんの遺物を残しています。シュリーマンによって発掘されたトロイの遺跡は有名ですが、ここも攻防があった戦いの跡ですが、誰も負の遺産などと呼ぶことはありません。確かに沖縄戦においては、劣勢に立たされた軍部には住民の安全を配慮する余裕がなく、結果として県民に多くの犠牲者を出しましたが、民間人を巻き込む危険性を無視した点については、米軍も同罪です。多くの悲劇が生じる結果となりましたが、それを負の遺産呼ばわりすることは、生き延びることが叶わなかった、沖縄戦にかかわった全ての人の存在を無視しているように感じられます。

司令部跡は悲しい戦争の遺物ではありますが、その時点で国家の存続を願い、本土への米軍の進行を阻止しようとした軍部が残した歴史の証人です。正でも不でもなく、戦争遺産と呼べば良いのではないかと考えます。

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