2020年9月 7日 (月)

こんなのありか、イージスアショア代替案

イージスアショアは、運用を押し付けられた陸上自衛隊のサボタージュによってか、河野防衛相によって断念に追い込まれてしまいました。政府はイージスアショアの代案として複数案を検討していましたが、最終的にイージスシステムを搭載した迎撃専用艦を建造したいと米国に伝達したと、中日新聞が伝えています。迎撃専用艦はミサイル防衛に特化して、これまでのイージス艦が搭載しているその他の装備を省くことで、建造費を抑制できるとしています。

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イージスアショアのレーダー部分(出典:防衛省)

しかし、これは、実におかしな話です。そもそもイージスアショア導入のいきさつとしては、ミサイル防衛には最低2隻のイージス艦を常時投入する必要がありますが、年間半年近く整備や休養で寄港する必要があるので、イージス艦の運用が制限され海自に大きな負担となっている。近年は隊員の採用も困難となっており、イージスアショアの設置によってイージス艦を本来の防空任務に投入でき、システム全体の運用経費もイージス艦よりも安く抑えられるというものです。イージスアショアの運用は、陸上設備なので陸自が担当することになっていましたので、海自の人員の問題も解決できる、いいことずくめのものでした。また、陸上勤務であれば、隊員の補充もそんなに問題にはならないであろうと考えられました。

ところが、計画が断念されたと思ったら何のことはなく、新たにイージスシステム搭載艦の建造では、海自の負担は解消できません。しかも艦船の場合は、搭載ミサイルの段数に限りがあります、それぞれの艦に分散して搭載しますので、寄港中は原則的に遊休化してしまいます。イージスアショアであれば寄港の必要はありませんし、ミサイルの補充も容易に行えます。また、相手の出方によっては使用するミサイルの変更も可能ですが、艦船の場合は海上でこれらの作業を行うことはできないので、一定期間現場を離れなければなりません。

総合的に考えれば、イージスアショアに勝る案はないのに、何故元の木阿弥になってしまったのか、全く理解できません。今回の案では、海自の負担は解消されませんので、この案は海自から出たものではないでしょう。であれば、出所は官邸と考えるのが相当です。しかも安倍首相が退任を控えていますので、自らの手でこの問題に決着を付けたい思惑があったであろうと考えられます。しかし、繰り返しになりますが、この案は一周回って最初に立ち返っただけで、何の解決にもなっていないのです。勿論、手をこまねいているだけよりは、ましですが、今更感が拭えません。政治主導・官邸主導と言ってもこんなもので、アベノマスクと何ら変わるところはありません。

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2020年8月23日 (日)

C-2輸送機が不整地離着陸試験を予定

国産輸送機のC-2に輸出話が出ているそうです。C-2に関しては、これまでも度々輸出の話が聞かれましたが、製造数が少ないことで、機体単価が高くなってしまうせいか、実現していません。C-2は、国内の政治的な理由によって航続距離を極端に短く抑えられたC-1の後継機で、C-1の時代には考えられなかった国際貢献を視野に、旅客機とおなじ高度を高速で、長距離飛べる設計となっています。似たような構想で、ドイツ・フランス・イギリスなどが共同開発したA400Mがありますが、こちらは開発が難航し、機体強度を補強したことから重量が増加し、最大積載量が減少して、C-2に準ずる性能となってしまいました。このため、ドイツが要求していたプーマ装軌式装甲戦闘車はパーツの一部を外さないと搭載できなくなってしまいました。一方で、車体重量が違いますが、C-2には16式機動戦闘車をそのままの状態で積載可能です。

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着陸態勢のC-2輸送機。

           C-2                A400M

最大積載量    36トン              30トン

巡航速度     890Km(高度12200m)   780Km(高度11300m)

航続距離     30トン/5700Km        30トン/4540Km

今回の輸出先は中東のUAEで、UAEはC-2が不整地での運用能力があるのかを照会して来たとのことです。不整地運用とは、アスファルト舗装がされていない滑走路で離着陸することですが、単に舗装がされていないだけか、それとも整地されていない荒野を指すこともあり、大変幅広い解釈を持つ言葉です。C-2は国内での運用には必要ないとして、開発段階から不整地運用能力を求めませんでした。一方で、A400Mや現在自衛隊でも運用中のC-130Hは不整地運用能力を備えているとされています。
しかし、この不整地も未舗装ということであれば全く問題ありませんが、未整地であれば大問題です。輸送機は大変重い機体なので、未整地に着陸すると地面をえぐってしまいます。すると表面の土や小石を巻き上げ、機体やエンジンを損傷しかねないのです。実際に訓練で未整地着陸を行い、機体を損傷した実例もありますので、よほどの緊急事態でない限り未整地に着陸することはないと思われます。また、現在ではほとんどの民間空港が舗装化されており、高価で貴重な軍用機を運用する軍用空港であれば未舗装滑走路を使う場面は、まずないであろうと思われます。

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一応C-2にも不整地運用への対応策は考えられており、本体への小石などの飛散を防ぐプロテクターなどの装着で、機体の保全を図る構想がありました。不整地での離着陸試験の実施が今年10月に予定されているのは、恐らくこのプロテクターの装着など、機体側の準備があるのではないかと考えます。輸出の可否はともかく、様々な事態に対応できるようC-2をブラッシュアップすることは有益なので、試験の成功を祈りたいと思います。

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地上展示中のC-2輸送機です。

     

   

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2020年8月14日 (金)

グローバルホークの導入が中止か

先頃、河野防衛相が突然地上配備型イージスシステム、イージスアショアの導入中止を発表して世間を驚かせましたが、今度は滞空型無人偵察機、RQ-4Bグローバルホーク(以下グロホ)の導入中止を検討中と時事通信が伝えています。グロホは、米軍が運用中の滞空型無人偵察機で、18000m上空を30時間飛行しながら地上を偵察・監視でき、地上を移動する目標を継続的に追跡することが可能です。

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RQ-4Bグローバルホーク (出典:防衛省)

イージスアショアについては、北朝鮮の弾道ミサイル防衛には欠かせないとして、導入を決定していたにもかかわらず、発射時のブースター落下問題をめぐる不手際で、設置予定地の反対にあい、配備基地の変更も検討されないまま導入を中止するという極めてお粗末な展開となりましたが、未だに代替装備の方向性が打ち出されていません。安全保障の重要政策の決定について、ちょっと思慮が欠けているのでは危惧の念が拭えません。

グロホについても、米軍の運用を見て導入を決めたようですが、当初から周辺を広域な海洋に囲まれている我が国では、地上監視型のグロホではなく、海洋監視型のトリトンの方が望ましいのではないかとの声がありましたが、グロホの導入に突き進んだ経緯があります。米軍では、イラクやアフガニスタンの内陸で、反対派武装勢力の発見・監視に当たっていますが、高性能の対空兵器を持っていない相手だからこそ通用しています。ところが、長射程の対空ミサイルを持っているイランは、ペルシャ湾の公海上を飛行していたグロホを領空侵犯をしたとして撃墜してしまいました。この事件について米軍は軍事行動を取りませんでしたが、大変効果な機体でありながら、簡単に撃墜を許してしまうのは運用側にとっては困った事態です。また、

米軍がグロホのブロック20と30の運用を中止する動きが出たことも懸念材料となっています。我が国は早期警戒管制機にE-767を導入しましたが、この機体は我が国だけが使っています。しかし、搭載している機材が米軍が多数配備しているE-3と同じであるため、アップグレードやメンテナンスに困ることはありません。一方で、オーストラリアや韓国は少し小型で価格の安いE-737を導入しましたが、こちらは米軍が採用していないため、米軍によるアップグレードは行われず、アップグレードは運用側がすべての費用を負担しなければなりません。米軍ののブロック30が運用中止になれば、かなりの費用増になることが予想され、このことが導入にためらいを生んだ可能性があります。実際、攻撃ヘリにおいては、当初62機の導入を予定していたAH-64Dアパッチロングボウの調達を、ブロックⅡの生産中止によって13機で打ち切っています。

我が国では南西諸島周辺の監視や、北朝鮮の監視を運用目的としていましたが、中国も北朝鮮も戦闘機や対空ミサイルを持っていますので、緊張が高まる状況では果たして有効に運用できるのかが懸念されます。監視や偵察能力としては、現在導入が進んでいるF-35戦闘機は、はるか遠方の地上を監視できる能力を備えており、偵察機として使うのに十分な能力を備えています。また、ステルス機であるため、相手側に発見されにくく、もし、攻撃を受けても、探知したり反撃することも可能です。そんなことから、偵察に特化したグロホにこだわるよりも、その分の費用を他の分野に振り向けようとの意向もあるかも知れません。グロホは当初見積もりで、関連の機材を含めて3機で510億円でしたが、その後23%の増額になっていると言うことなので、およそ630億円となります 。

自衛隊はF-4ファントムの偵察機を保有・運用して来ましたが、機材が時代遅れであるばかりか、期待も老朽化が進んでいますが、後継機は導入できていません。F-35のステルス性と地上監視能力を見れば、中途半端な偵察機の導入は不要となった可能性は十分考えられます。

以上のことを勘案すれば、グロホを積極的に導入する必然性を見出しにくいのは事実です。イージスアショアの導入が中止になったことで、一旦決めた装備の導入を撤回することへのハードルが著しく下がっていますので、グロホの導入中止となる可能性はかなり高いのではと思われます。

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2020年6月22日 (月)

中国潜水艦が暗躍

防衛省によれば、今月18日午後、奄美大島北東の接続水域を潜水したまま航行している潜水艦1隻を発見、哨戒機、護衛艦による監視を続けたところ、20日に横当島の南の海域に達し、西進を続けたとのことです。航行の状況から、中国海軍の潜水艦と見られています。

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奄美大島周辺の地図です。 (国土地理院「地理院地図」を加工)

潜水艦は矢印の位置を航行したものと思われます。接続水域は領海の外側12海里の水域で、一応自由航行が認められています。航行の状況から、中国の基地を出航、西太平洋、もしくは日本近海で活動した後、中国の港に帰港のため、当該の水域を航行したものと思われます。発見後は、P-1、P-3C哨戒機、イージス艦を含む護衛艦3隻で追跡し、航行を監視したようですが、問題は発見以前の行動です。

我が国は領海周辺及び排他的経済水域内における他国軍艦の行動に目を光らせています。特に潜水艦については、潜航したまま航行している場合には発見が難しいため、ソナーなどを利用して、その行動を厳しく監視しています。今回、奄美大島に接近した段階で発見したことになっていますが、それ以前の位置については言及されていません。これは、それ以前の行動について、全く把握できていないかった可能性がありますが、我が国の領海周辺を東進した時点で捕捉していた可能性もあります。海自の探知能力を相手に知られたくないために、敢えて、そのことに触れないことが考えられるからです。また、今回監視に加わった艦船に、潜水艦が含まれていませんが、潜水艦が加わっていた可能性も否定できませんが、こちらも明らかにされることはないでしょう。

では、なぜ中国の潜水艦は我が国周辺で活動していたのでしょうか。一つには中国の近海には、訓練に適した深海が見当たらないので、太平洋に進出して訓練に当たっていた可能性、もう一つは、有事に備えて海底の地形や海流の調査に当たっていた可能性が考えられますが、中国が公表することはあり得ませんので、真相は闇の中です。但し、一般的な訓練であれば、訓練支援のための艦艇を伴いますので、隠密裏に航行すること自体が目的と考えるのが妥当です。いずれにしても、中国は海軍力を増強し続けていますので、我が国としても監視の目を緩めるわけには行かないと言うことです。海自ではFFMと呼ばれる多機能の新型護衛艦を今後22隻建造し、老朽化した護衛艦を更新していく計画ですが、我が国船舶の航行の安全のためにも、早期の投入が望まれます。

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2020年6月17日 (水)

イージスアショア配備停止

15日、河野防衛大臣が、地上配備型イージスシステムであるイージスアショアの配備を停止すると突如発表しました。イージスアショアは発射実験を繰り返す、北朝鮮の弾道ミサイルの迎撃能力を強化することを目的に導入が図られていました。大気圏外から突入してくる弾道ミサイルを宇宙空間で迎撃するには、探知距離の長いレーダー、複雑な軌道計算が可能なコンピューターシステム、長い射程を有する迎撃ミサイルが必要ですが、これらを一つにまとめたのがイージス艦に搭載されたイージスシステムです。我が国では、こんごう型4隻、あたご型2隻、まや型2隻の8隻体制で弾道ミサイル防衛に当たる構想でした。この場合、日本海中央と東シナ海に1隻ずつを配置する必要があります。8隻体制であれば、残りが6隻あるので、問題ないのではないかと思われがちですが、艦船は1年の半年近くは定期整備や補給で任務に就くことができません。

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写真左側がこんごう型のイージス艦「ちょうかい」です。

これまでは無理やり2隻配備を維持してきましたが、その分海自側の負担は大きく、イージス艦の本来任務の艦隊防空にも支障が出かねませんでした。この海自側の負担を解消するために取られたのが、定期整備で離脱の必要がない地上設置型のイージスアショアでした。ところが、設置場所を陸上自衛隊の演習場としたために、市街地近くである秋田県の新屋演習場や山口県のむつみ演習場が選定されました。ところが、むつみ演習場は内陸部に位置するために、発射後に投棄されるブースターの地上落下問題が争点となってしまいました。

河野大臣は。ブースターを基地内に落下させるために、SM-3本体やシステムの改修をするのに費用と年数がかかり過ぎるとして計画の停止を判断したものですが、当初の配備場所の選定が杜撰だったことには言及せずに、イージスアショアの役割はイージス艦が担えるとしました。しかし、これではイージス艦の負担を解消して、防衛体制を強化する目的を放棄することになり本末転倒です。一部にはイージスアショアの代わりにイージス艦を2隻建造すれば良いとの意見がありますが、これは大きな間違いです。最初に述べた通り、艦船は半年近く定期整備や補給が必要になりますので、イージスアショア2ヶ所を補うのにはイージス艦4隻が必要になります。

イージスアショアは2基でおよそ6000億円と見積もられていて、高額と批判されましたが、イージス艦4隻なら約8000億円が必要となります。また、一度設置すれば、多額な維持費用は不要ですが、イージス艦は燃料費や定期点検の費用がずっと掛かり続けます。費用を問題にするのであれば、イージス艦への肩代わりは更なる費用発生となってしまいます。今朝の中日新聞は、社説でコロナウイルス問題を引き合いに、もっと国民の命や暮らしを守るために予算を振り向けるべきとしていますが、弾道ミサイル防衛に対し、現在取り得るのはイージスシステムが唯一の手段です。他にTHAADがありますが、我が国の場合、国土が細長いので、多数の配備が必要になり、更に多くの費用が必要となります。無駄な出費を抑えるためとした、今回の配備停止の判断ですが、政治家の誤った認識によるものと思われて仕方ありません。

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2020年1月17日 (金)

護衛艦の中東派遣問題で閉会中審査

現在国会は閉会中ですが、本日海上自衛隊を中東に派遣する問題で衆議員のの安全保障委員会、参議院の安全外交委員会で閉会中審査が行われます。政府は今回、派遣の目的を調査・研究としています。米国とイランの武力衝突の可能性や、イラン革命防衛隊によるタンカー攻撃など、現地の情勢について、実際に部隊を派遣して情報を収集ことは、中東地域に原油輸入の大半を依存する我が国にとっては当然の措置と考えます。

これに対し、野党側は紛争に巻き込まれかねない、自衛隊員に危害が及ぶ可能性があるとして反対していますが、民間船舶が攻撃を受けることはあってはならないことですし、そのような危険があるなら、なおのこと派遣が求められるのではないでしょうか。今回派遣されるのは、護衛艦たかなみと哨戒機P-3C2機です。政府・防衛省がどこまでの事態を想定しているのか判りませんが、もし我が国のタンカーに対して危害が加えられる危険性が認められるのであれば、速やかに海上警備行動を発令し、必要なだけの艦船を派遣すべきです。

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ヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」です。広いスペースがありますので、長期間任務に就く隊員の休養が可能ですし、潜水艦を探知するソナー、対空ミサイルを装備しています。また哨戒ヘリには小型ながら対艦ミサイルも搭載できますので、このような任務に当たるのには適した護衛艦です。

我が国が自国船舶の保護のため艦船を派遣することは、周辺国にそれだけ地域の安全について関心を持っていることをアピールすることになりますので、紛争エスカレート防止にも一役を担うことになるのではないかと思います。

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2019年12月25日 (水)

どんなクリスマスプレゼントが

今日はクリスマス、今年も残り一週間となりました。昨日のクリスマスイブは、楽しい食卓を囲んだ家庭も多かったことと思います。子供たちには、サンタさんから素敵なプレゼントがあったことでしょうが、大人たちには大変気になることがあります。それは、北朝鮮が米国に対し、素敵なクリスマスプレゼントを贈る用意があるとしていることで、過去の行動を見れば、弾道ミサイルを米国の鼻先に撃ち込むことが予想されます。

米国も、この挑発には早くから反応して、弾道ミサイルの発射を探知するRC-135コブラ偵察機を2機嘉手納空軍基地に派遣しています。RC-135は全部で3機しかない機体ですから、いかに米国がこの事態を重視しているかが判ります。我が国も、弾道ミサイル防衛能力を備えたイージス艦2隻を、日本海と東シナ海に配置して警戒に当たっています。

北朝鮮は、既にグアムやハワイ、そして米国東海岸を射程に収めた弾道ミサイルを開発していますが、新たにTEL(移動式発射機)を70両製造する計画を立て、既に量産体制に入っているものと見られ、一段と弾道ミサイルの発射能力を強化しようとしています。これまで、トランプ大統領は、短距離弾道ミサイルの発射については、米国本土への直接的な脅威ではないとして、寛容な姿勢を見せて来ましたが、北朝鮮が中・長距離のミサイルを発射すれば、メンツは丸つぶれとなります。北朝鮮は29日に最高人民会議を開き、重要な決定をするとしていますが、22日には中央軍事委員会拡大会議を開いており、軍事的な事項を決定した可能性があります。

世間が年末年始に浮かれている時、安全保障の分野の最前線の任務に就いておられる方々には本当に申し訳ない思いですが、万一の事態に備えて万全の態勢で当たって頂きたいと思います。

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SM-3ブロック2の発射実験 (出典:防衛省)

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どんなクリスマスプレゼントが

今日はクリスマス、今年も残り一週間となりました。昨日のクリスマスイブは、楽しい食卓を囲んだ家庭も多かったことと思います。子供たちには、サンタさんから素敵なプレゼントがあったことでしょうが、大人たちには大変気になることがあります。それは、北朝鮮が米国に対し、素敵なクリスマスプレゼントを贈る用意があるとしていることで、過去の行動を見れば、弾道ミサイルを米国の鼻先に撃ち込むことが予想されます。

米国も、この挑発には早くから反応して、弾道ミサイルの発射を探知するRC-135コブラボール偵察機を2機、嘉手納空軍基地に派遣しています。RC-135は全部で3機しかない機体ですから、いかに米国がこの事態を重視しているかが判ります。我が国も、弾道ミサイル防衛能力を備えたイージス艦2隻を、日本海と東シナ海に配置して警戒に当たっています。

北朝鮮は、既にグアムやハワイ、そして米国東海岸を射程に収めた弾道ミサイルを開発していますが、新たにTEL(移動式発射機)を70両製造する計画を立て、既に量産体制に入っているものと見られ、一段と弾道ミサイルの発射能力を強化しようとしています。これまで、トランプ大統領は、短距離弾道ミサイルの発射については、米国本土への直接的な脅威ではないとして、寛容な姿勢を見せて来ましたが、北朝鮮が中・長距離のミサイルを発射すれば、メンツは丸つぶれとなります。北朝鮮は29日に最高人民会議を開き、重要な決定をするとしていますが、22日には中央軍事委員会拡大会議を開いており、軍事的な事項を決定した可能性があります。

世間が年末年始に浮かれている時、安全保障の分野の最前線の任務に就いておられる方々には本当に申し訳ない思いですが、万一の事態に備えて万全の態勢で当たって頂きたいと思います。

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SM-3ブロック2の発射実験 (出典:防衛省)

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2019年12月23日 (月)

Fー35A が1機94億円に

先日も記事にしましたが、これまで機体価格が高額だとして評判が悪かったFー35A の価格が、劇的に引き下げられました。先日公表された来年度予算案によれば、国内での組み立てよりも、完成した機体を輸入する方が十億円以上安くなるとされていた価格が、更に安くなりました。

Fー35A は最新型のステルス戦闘機であり、開発費が増大したことから1機当たり130億円前後となって、高額過ぎるとの批判の声が上がったことから、国内組み立てから完成機の輸入に一旦は方針が転換されました。今年度の予算では、6機で681億円でしたので、1機当たりは113.5億円でした。ところが来年度予算では、3機で281億円なので、1機当たりは93.7億円と実に20億円も安くなっています。

我が国は武器輸出三原則の関係で、Fー35の共同開発に加わることはできませんでした。それなのに、ここまで安くなったことに驚くしかありませんが、正直なところ理由が全く判りません。しかも、かつては高いと言われた国内での最終組み立てでの価格です。おそらくは政治的な判断によるものでしょうが、あまりの差額の大きさに、ただただ戸惑うばかりです。

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2019年12月12日 (木)

政府がF-35の国内組み立て継続に方針転換

日経新聞やNHKの報道によれば、政府がステルス戦闘機、F-35の国内組み立てを継続することに方針転換した模様です。政府は、ステルス戦闘機F-35Aの導入に当たり、最終組み立てを国内で行う前提で42機を調達しています。これは、戦闘機の製造能力を維持することが目的でした。しかし、その後、追加調達を行うに当たり、国内で組み立てを行うと割高になるので、完成した機体を輸入するよう今年の1月に方針転換をし、105機の追加導入を決定していました。

今回の決定はいささか唐突ですし、理由も、再検討したところ国内組み立ての方が安いことが判ったためとしていますが、具体性がありません。トランプ政権は、駐留米軍経費の負担増を迫っていますが、もしかしたらこの動きと何らかの関係があるのかも知れませんが、今のところは詳細は判っていません。いずれにしても、高額な税金の使途に関わることなので、推移を注視したいと思います。

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