シリアの化学兵器関連施設への巡航ミサイル攻撃について概要が明らかになりました。
紅海、ペルシャ湾、地中海の米艦船からトマホークが合わせて66発、地中海の仏フリゲートからNdCN巡航ミサイルが3発、米空軍のB-1B爆撃機2機からJASSM-ER巡航ミサイルが19発、英空軍のトーネード攻撃機4機からストームシャドウ巡航ミサイルが8発、仏空軍のラファール戦闘機5機とミラージュ2000戦闘機4機からスカルプ-EG巡航ミサイルが9発の合計105発が撃ち込まれたと言うことです。
この内、航空機については米空軍のF-15、F-16戦闘機、英空軍のユーロファイター戦闘機、仏空軍の早期警戒管制機が護衛や警戒のために随伴した模様ですが、中でもB-1B爆撃機にEA-6B電子戦機が随伴したことです。電子戦機は味方の損害を抑えるため、相手のレーダー網を制圧したり、相手機の通信やレーダーの使用を妨害する能力を持っていますが、米海軍では既に後継のEA-18Gに置き換わっており、EA-6Bが登場したことは正直驚きです。シリアにはロシア軍が駐留してアサド政権を後押ししており、ロシア基地が攻撃されれば、反撃すると公言していましたので、万一に備えて電子戦機を投入したものと思われます。
では何故最新鋭のEA-18Gではなく、旧型のEA-6Bだったのか。それはシリアからの長距離地対空ミサイルの攻撃を考慮したためだと考えられます。ロシアはシリアにS-300地対空ミサイルシステムを供与していますし、ラタキアにあるフメイミム空軍基地には最新鋭のS-400長距離地対空ミサイルシステムを派遣しています。当然首都ダマスカス近郊にもそれなりの防空システムを展開していると考えるのが自然です。ダマスカスから南部の国境までは約140Kmなので、長距離ミサイルを使用すれば、越境しての迎撃も可能です。
JASSM-ER巡航ミサイルの射程は約900Kmなので、目標から遠く離れた位置から攻撃可能ですが、速度は時速900Kmほどですから目標まで1時間かかることになります。これはかなりの長時間で、もし事前に探知されれば迎撃するのに必要な時間を相手に与えることになります。従って、できるだけ近い位置から発射する方が、目標にに命中する機会が増えることになりますが、撃墜の危険性は高まります。ましてや今回は事前に攻撃を予告していますので、リスクは更に高まります。
従って、ステルス機のB-1Bはともかく、護衛のF-15、F-16戦闘機への攻撃を避けるため電子戦機を派遣する必要がありますが、ロシア軍に最新の電子戦機の手の内を見せたくなかったので、旧型のEA-6Bを引っ張り出したと言うのが真相ではないかと推測します。米軍では海軍が全てEA-18Gに更新されていますが、海兵隊にはまだEA-6Bが3飛行隊残っており、今回はこの機体が使われた可能性があります。
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