2019年7月12日 (金)

中央アルプスの5羽の雷鳥の雛が全滅の模様

環境省が11日に発表したところによれば、中ア木曽駒ケ岳周辺に生息している雌1羽から孵化したライチョウの雛5羽の生存が確認できず、全滅したと見られるとのことです。中アではライチョウは絶滅したものと見られていましたが、昨年から雌1羽が確認されていました。この一羽は他の山域から飛来したものと見られ、トキやコウノトリでも本来の生息地を離れて生存している例が確認されています。

最近になり、この雌が抱卵しているのが確認されましたが、付近に雄はいないことから無精卵の可能性が高いと判断されました。このため、環境省では乗鞍岳で採取した有精卵とすり替えて繁殖を目指したところ、5羽が羽化したことが確認されました。このまま順調に育つことが期待されましたが、残念ながらその願いは叶わなかったようです。生育地付近ではキツネの糞が見つかっていることから、捕食された可能性も考えられます。中アでライチョウが絶滅したのは、それだけ他の山域よりも生存する環境が厳しいためだと考えられますので、無理して増殖を図ることが本当に望ましいのか、改めて検討することも必要なのではないかと考えます。

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南ア蝙蝠岳のライチョウです。

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2017年10月13日 (金)

対馬のカワウソは大陸系だった

対馬でカワウソの映像が記録されたことから、絶滅したと考えられているニホンカワウソの可能性があるとして、8月から9月にかけて環境省が現地調査を行ないましたが、ニホンカワウソの可能性は否定されました。採集されたフンのDNAからユーラシアカワウソのオスであったことが明らかになりましたが、メスの存在については確認されませんでした。もしメスも生息しているようなら繁殖することも期待されますが、現時点ではその可能性はかなり低いようです。

対馬は入り江が入り組んだ複雑な地形をしており、もしかしたらニホンカワウソがひっそりと生き残っていたかもと期待していましたが、残念ながらその可能性は否定されてしまいました。ユーラシアカワウソはサハリンや韓国に生息していますが、サハリンからは遠く離れていることから、韓国から海流に乗って流れつき、生息しているものと考えられます。

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東南アジアに生息しているコツメカワウソです。

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2017年9月18日 (月)

環境保全と自然環境

何やら訳が判らないタイトルですが、ちょっと認識を新たにする出来事がありましたので、記事に取り上げました。水質汚染は、大気汚染と並んで身近な環境破壊ですが、水質汚染防止策も度が過ぎると弊害があるそうです。

水質汚染と言えば、かつてはBODとかCODなどと言った言葉がニュースに頻繁に登場していました。また、家庭で使用した洗剤に含まれるリンによって、湖水や海水が冨栄養化してプtランクトンの異常発生が問題になりました。そこで、下水処理プラントでは化学処理によってリンを除去する対策を取るようになりました。

環境基準によれば、下水処理後のリンの濃度は年間平均で1.0mg/Lですが、実際には0.4mg/Lとかなり低い数値に抑えられています。基準より低いのだから、それはそれで良いことじゃないのか、と言う声が聞こえて来そうですが、実は過ぎたるは及ばざるが如しで、弊害があるようです。実は海水中には微量のリンが含まれており、海藻の生育に大きな影響を及ぼしています。

これまで家庭排水は十分浄化されないまま、河川や海に排出されていました。ところが、先に述べたように、環境に悪い影響を与えてしまったことから、リンの排出について規制が強化された結果、海水中のリンの濃度が低下し、海苔などの生育に支障をきたす様になってしまったと言うことです。そこで、愛知県では特定の下水処理場において、リンの排出濃度を基準を超えない範囲で上昇させる措置を取るようにしたいと準備を進めていると言うことです。

過度に澄んだ水には魚は棲まないと言われますが、環境負荷物質の排出濃度一つ取っても、自然のバランスを保つのはかなり難しいものだと思いました。

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2017年8月18日 (金)

対馬でカワウソ目撃

二ホンカワウソは1970年代に四国で目撃されたのを最後に生存が確認できず、絶滅したものと考えられています。しかし、今年の2月に琉球大学が、ツシマヤマネコの生態調査用に設置したカメラにカワウソが写っているのが確認されました。

情報を受けた環境省が7月に現地を調査したところカワウソのふんを採取、分析したところオス・メス各1頭のものであることが判明し、カワウソの生存が裏付けられましたが、日数が経過していたためカワウソの種類までは限定できませんでした。

二ホンカワウソは、かつては北海道から九州までの日本各地に生息しており、対馬での生息も確認されていました。しかし絶滅に至った状況や、対馬が韓国に近く、韓国では今もユーラシアカワウソが生息していることから、写真のカワウソもユーラシアカワウソの可能性が高いものと見られています。しかし、対馬は周囲を海に囲まれて複雑な海岸線で囲まれており、ニホンカワウソがひっそり生息していた可能性もない訳ではありません。

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動物園で人気者のコツメカワウソです。名前の由来はそのまんま、爪が小さいことからだそうです。

対馬で見つかったカワウソの種が何であれ、日本の自然界でカワウソが見つかったことは大変うれしいことです。環境省は今月末にも改めて調査に入るようですが、もしニホンカワウソであれば、世紀の大発見となりますのでその結果が待たれます。

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2017年5月20日 (土)

自然界のコウノトリをハンターが射殺

大変残念な、信じられない事件が起きました。放鳥されたコウノトリが定着して営巣し、4羽のヒナが孵っていた島根県雲南市で、害鳥としてサギを駆除していたハンターが水田にいた雌のコウノトリを射殺、足環を見て初めてコウノトリと気づいたということです。

まずこのハンターは鳥の同定もできないようなので、銃による狩猟免許は許されません。特別天然記念物のコウノトリを知らない時点で、ハンター失格です。アオサギと見誤ったのかもしれませんが、考えられません。

また、雲南市も営巣地周辺(今回は営巣地から3Km地点)の保護に努めるのは当然で、銃による駆除を公然と行わせたのは無神経、無責任としか言いようがありません。

巣には4羽のヒナが確認されているようですが、残された雄だけで4羽のヒナを育てるのはかなり厳しいと思われますので、生育が思わしくないと判断されれば速やかに保護するよう希望します。

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兵庫県豊岡市にて撮影の自然界でのコウノトリです。

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こちらがアオサギですが、コウノトリとは全く別の外観です。

今回の事件は我が国の自然保護史上最大の汚点であり、環境省には再発防止を強く求めたいと思います。

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2017年5月11日 (木)

クニマスが秋田県に里帰り

2010年に約70年ぶりに山梨県の西湖(さいこ)で確認された淡水魚「クニマス」の成魚10匹が10日、北秋田市の県水産振興センター「内水面試験池」に到着しました。秋田県では将来的に田沢湖にクニマスを復活させる「田沢湖再生クニマス里帰りプロジェクト」を進めており、3月末に山梨県と「クニマス貸与に関する覚書」を締結しており、今回の里帰りはこの覚書によるものです。

クニマスは田沢湖の固有種でしたが、戦前に発電目的で強酸性の河川の水を導入したことにより、絶滅してしまいました。河川の導入前、絶滅を危惧した関係者がいくつかの湖にクニマスの受精卵を送りましたが、定着が確認できないままクニマスは絶滅してしまいました。

時は流れ、クニマスの絵の制作を依頼された東京海洋大学の客員准教授の「さかなクン」が、作画の参考にと西湖から近縁種のヒメマスを取り寄せたところ、クニマスに良く似た固体が混じっていたことから、クニマスではないかと直感し、詳しく調べたところ幻のクニマスであることが確認されました。

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田沢湖町の某所に掲げられているさかなクンによるクニマスのイラストです。5年前にこのイラストを見た時、こんな日が来ればいいなあと思いましたが、こんなに早く実現して感激もひとしおです。

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2016年8月 9日 (火)

浜松にコウノトリが飛来

中日新聞が浜松市南部にコウノトリが飛来していたことを伝えました。7日付の記事によれば、先月末に市内南区下飯田町の水田にコウノトリ1羽が飛来し、周辺を移動していたようです。足環とGPSの記録から、今年6月に千葉県野田市で放鳥された個体と見られており、ペアを組む相手を探して南下してきたのではないかと見られます。

記事が遅れて掲載されたのは、既に他の区域に去って公表してもコウノトリ目当てに見物客が殺到する恐れがなくなったからではないかと思われます。私自身は昨年6月に豊岡市で放鳥されたコウノトリを見てはいますが、地元に飛来したのであれば是非見てみたいと思います。ただ、定着していないのであれば、むやみに近づくことはストレスを与えることになりますので興味本位に近づくことは慎むべきです。

ところで今朝、たまたま空を見上げていたところ、かなり高い高度を旋回しながら飛翔する大型の鳥を目撃しました。両翼が黒くコウノトリの外観に似ていると思われましたが、一瞬のことで自信がありませんが、もしそうであれば周辺の水田にしばらく定着して欲しいと願わずにはいられません。

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豊岡市の水田で餌を探す放鳥されたコウノトリです。

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2015年12月15日 (火)

ナベヅルの新たな越冬地

日本の鶴と言えば優美な姿の釧路のタンチョウヅルが思い浮かびますが、数が多いのはナベヅルで、越冬地として鹿児島県の出水市がが有名です。ナベヅルは江戸時代には日本の各地に飛来していたようですが、明治以降は出水市と山口県の周南市が主な飛来地となっています。

ナベヅルの全世界での生息数は約1万羽と見られ、出水市にはその内の9割が越冬に訪れていると考えられています。限られた地域に1万羽ものナベヅルが密集して生息すると、もし伝染病が蔓延した場合に回復不能なダメージを受ける恐れがあり、分散化が課題となっています。昨年も鳥インフルで死亡したナベヅルが回収されており、大量死することも十分考えられました。

そんな心配をされているナベヅルですが、この秋は四国への飛来数が例年になく増えているとの報道がありました。飛来地として高知県では宿毛市、南国市、四万十市、愛媛県では西条市、西予市、四国中央市、徳島県では阿南市、海陽町の各地で目撃情報が上がり、飛来数は最大で300羽に上りました。12月に入り、狩猟などの影響でやや減少しているようですが、それでも約180羽が各地に留まり、相当数が越冬するものと期待されています。

渡り鳥を定着させるには、餌場となる環境の整備や人間や動物の接近を制限する保護策が必要となります。水田などの場合は農作業との兼ね合いで、住民の理解を得ることが難しいことも想定されますが、太古より連綿と続いたナベヅルの種としての存続が守られるように行政のバックアップが望まれます。

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2015年9月 1日 (火)

雷鳥の危機

高山帯に生息する雷鳥は個体数が減少し続けており、国の特別天然記念物に指定され、今年からは人工ふ化が始まるなど保護の手が広げられていますが、具体的な成果にまでは繋がっていません。そんな中とてもショッキングなニュースが入りました。

これまで雷鳥の天敵はキツネやイタチなどと考えられていましたが、北アルプスで、なんと猿が雷鳥のヒナを捕食する現場が目撃されたと言うことです。北アでは猿の群れが、餌を求めて稜線まで移動して来ることが知られていますが、集団で行動する猿が雷鳥を襲えば、素早い行動が取れないヒナが逃げ切ることはできないでしょう。

雷鳥は氷河時代の生き残りとも呼ばれ、冬は真っ白い羽根に姿を変えるなどして巧みに天敵から逃げ延びて来ましたが、まさか猿に襲われることになるとは夢にも思わなかったことでしょう。猿の駆除など早期の対策が望まれます。

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ピンボケですが、雷鳥の親子です。安心して子育てができる環境を取り戻したいものです。

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2015年7月 5日 (日)

コウノトリ千葉県での放鳥近づく

コウノトリは自然界では一度絶滅してしまいましたが、現在兵庫県豊岡市を中心に人工飼育で繁殖した個体を自然界に放鳥し、野生に返す試みが続いています。豊岡市では2005年からを続け、その後自然界での繁殖が定着し、本日現在82羽が自然界で生存しています。

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水田で餌を採っているコウノトリ。自然復帰の試みが順調に進んでいますが、一極集中の状況を改善しようと、今月23日には千葉県野田市で今年孵化した3羽を放鳥することになっています。野田市ではコウノトリを保護するための条例も制定して、自然界への定着を見守ることになっています。

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大空を舞うコウノトリ。日本中でこのような光景が見られるといいのですが・・・。

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